後遺障害等級:第10級(1号~11号)認定の基準

後遺障害等級:第10級(1号~11号)認定とは?

交通事故の後遺障害等級10級は、手足の関節や指の機能障害、眼、耳、この等級から歯に関する障害(歯牙障害)も認定され、ほぼ全身の部位が後遺障害認定になっており、労働能力喪失率は27%に設定されており、後遺障害が残った場合、実生活にも大きな影響を与える症状が多くなっています。

自賠責保険の後遺障害等級別の件数構成比によりますと、後遺障害等級認定を受けた人の内、3.28%が10級の認定を受けています(平成25年度)
後遺障害等級認定を受けることにより、自賠責保険の保障対象は、逸失利益と後遺障害慰謝料を損害賠償として請求することができます。

後遺障害等級10級の11の認定条件

等級部位障害の程度
10級視力の障害1眼の視力が0.1以下になったもの
正面を見た場合に複視の症状を残すもの
口の障害咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの
14歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
耳の障害両耳の聴力が1m以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの
1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
上肢の障害1手の親指又は親指以外の2の手指の用を廃したもの
下肢の障害1下肢を3cm以上短縮したもの
1足の第1の足指又は他の4の足指を失ったもの
上肢の障害1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
下肢の障害1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの

片目の視力が0.1以下になったもの

1号 1眼の視力が0.1以下になったもの

視力障害については、基準が数値化されているため、後遺症認定においての争いはあまりありませんが、正常な状態でも、視力が0.1以下の人もいますが、裸眼ではなく矯正視力(眼鏡やコンタクトレンズを装着したであること)、あくまで交通事故が原因で視力に影響が出た場合です。
もともと視力が悪い人は、事故によって片方の視力が低下しても気がつかない方もいますので、気がついても、事故後はご自身の視力が低下していないか、必ず病院で確認をしましょう。

 

正面を見た時に物が二重に見える症状が残ったもの

複視とは、正面を見た時に、物が二重に見える状態の事で、頭痛やめまいが起こることなどから、日常生活に困難が生じる場合認定されます。
両眼で見た時に物が二重に見え、片方の眼で見た時はひとつに見える状態を両眼複視、片方の眼で見た時に二重に見えるものを単眼複視といい、交通事故により、頭部の外傷や眼の周囲の骨折等で、眼球の動きをコントロールする神経や筋肉に障害が残ることで起きるものです。

複視の要件は、複視のあることを自覚していること、眼筋の麻痺など、複視を残す明らかな原因が認められること、ヘススクリーンテストで患側の像が水平方向或いは垂直方向の目盛りで、5度以上離れた位置にあることが確認されることの3要件が必要です。

 

ものを噛み砕く機能かもしくは言葉を発する機能に障害が残ったもの

3号 咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの

咀嚼とは、食べ物を噛んで飲み込む機能と、言葉をを話す機能に障害が残った場合に認定されます。

両方とも口や顎あるいは舌といった部位を使う機能ですので、咀嚼機能に障害が出れば言語機能にも影響が出てくるのはよくあることで、咀嚼機能と言語機能のどちらか一方の機能に問題が残った場合に認定されます。

具体的には、柔らかい食物は食べることはできますが、歯ごたえのある食材などは食べることができない状態です。

言語の機能に障害を残すものとは、4つの子音のうち1つが発音できなくなった状態が該当します。

4つの子音とは、具体的には次の通りです。
・口唇音/ま行音・ぱ行音・ば行音・わ行音、ふ
・歯舌音/な行音・た行音・ら行音・ざ行音・しゅ・じゅ・し
・口蓋音/か行音・が行音・や行音・ひ・にゅ・ぎゅ・ん
・咽頭音/は行音

どちらか片方の障害のみであれば第10級3号、2つの障害が両方ともある場合は、第9級6号になります。

 

14個以上の歯に対し歯科補綴を必要としたもの

ここで初めて歯に関する障害が後遺障害として認定されます。大人の歯(永久歯)は全部で28本あり、その半分の14本以上に障害が残った状態で認定されるのが、後遺障害等級10級4号です。補綴とは、欠損した部位の形態と機能を人工物で補うことをいいます。但し、第三大臼歯(親知らず)、乳歯などは、対象外になります。しかし乳歯については、永久歯が生えないという医師の 証明があれば認定の対象となります。
また、前歯、奥歯といった場所の区別はなく、事故後、歯科医において入れ歯、差し歯、ブリッジ、インプラント等の治療を受け、日常生活に支障が感じなくなったとしても、後遺障害として賠償を求めることは可能です。

 

両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を聞き取るのが困難なほど低下したもの
片耳の聴力が耳に接しなければ大声を聞き取るのが困難なほど低下したもの

5号 両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの

耳の聴力障害に関するもので、それぞれ聴力の数値が決められています。

両耳の聴力が1メートル以上の距離では、普通の声で話される会話が、理解できなくなる程低下すれば認定されます。単純な音が聞き取れるか(純音)、言葉を言葉として聴き取れるか(明瞭度)の2種類の検査を行います。
具体的な症状として、純音聴力のレベルが50dB以上、または、40dB以上で、明瞭度が最高で70%以下です。

片耳が接する程、近寄らなければ、大声が聞き取れない状態とされています。
具体的な症状として、純音聴力レベルが片方の耳で80dB~90dB未満となっています。

 

片手のおや指の機能、おや指以外の2本の指の機能を失ったもの

片手のおや指の機能、おや指以外の2本の指の機能を失った場合に認定されます。

「用を廃したもの」とは、
・末節骨(指先から第一関節までの骨)の半分以上、失った場合
・指の根元が第二関節(親指の場合は第一関節)に著しい運動障害(可動域が1/2以下になったもの)になった場合
・親指の橈側外転(たとえば親指を立てる又は掌側外転(親指のてのひらにつける動作)のいずれかが健側の2分の1以下に制限されているもの
・神経麻痺の影響により指の末節の指腹部及び側部の深部感覚及び表在感覚が完全に脱失したもの

上記のような障害がひとつでも該当すれば、認定されます。

 

片足を3センチメートル以上短縮したもの
足の親指か、もしくは親指以外の4本の指を失ったもの

交通事故で足を怪我するケースとして、骨折があります。治療にあたって、完全な治癒がむずかしく片足の長さが3センチメートル以上、5センチメートル未満で短くなってしまった場合に認定され、5センチメートル以上短くなってしまった場合は、後遺障害等級8級5号になります。

片足の親指か、親指以外の4本を失った場合、認定されます。
「失った」とは、具体的に中足指節関節(足の指のそれぞれの付け根にある関節)から先を失った場合で、なお、指を失った足が、右足か左足かの区別はありません。

足指の欠損障害について、画像によって判別がつきやすく該当していれば認定自体は難しくはありません。

 

片腕の3大関節中の一つの関節の機能に重大な障害を残すもの
片足の3大関節中の一つの関節の機能に重大な障害を残すもの

3大関節とは、腕の場合は、肩関節・肘関節・手関節をいい、足の場合は、股関節・膝関節・足関節をいいます。

例えば,左膝関節にけががある場合,その左膝関節を、患側(かんそく)とし,けがをされていない右膝関節を、健側(けんそく)として,ご自身の右膝関節(健側)の可動域に比して左膝関節(患側)がどの程度制限されているかを比較して機能障害の有無や程度を判定します。片腕の一つの関節において、健側に比して患側の可動域が1/2以下に制限されている場合、認定されます。

※健側(けんそく)・・麻痺や障害などがない部位側のことである。
※患側(かんそく)・・麻痺や障害などがある

 

後遺障害等級10級の損害賠償額の計算例

55歳の会社員
事故前の年収600万円
後遺障害等級10級に該当したとして仮定した場合の後遺障害に関する損害額(弁護士会基準での計算)
後遺障害等級慰謝料・・・550万円

逸失利益・・・1521万7632円
600万円(基礎収入)×0.27(労働能力喪失率)×9.3936(労働能力喪失期間13年間のライプニッツ係数)=1521万7632円

 

まとめ

後遺障害等級10級についてご説明いたしました。10級という数字だけ見るとそこまで重大な障害ではないように思われるかもしれませんが、労働能力喪失率で判断しても3割近く、実生活にも大きな影響が出る後遺障害ばかりです。

既に上位等級で出てきている後遺障害については、この辺りからその等級をめぐり認定について争いが生じる事が多々あります。後遺障害の等級認定は最終的には人間が行う事なので、どうしても主観が混じってしまうことがあります。納得のいかない等級を認定されたら、交通事故に強い弁護士にご相談の上、「異議申立て」を行なうことをお勧めします。