後遺障害等級:第6級(1号~8号)認定の基準

交通事故の後遺障害等級6級は、これまでも上位の等級で登場してきた、眼、耳、指、腕、足に加えて、初めて脊柱への傷害による著しい変形障害や運動障害等、全部で8に分類され、労働能力喪失率は67%になっています。
医師の判断しだいで等級が変わってくるような、分かりにくい症状も含まれいます。

自賠責保険の、後遺障害等級別の件数構成比によりますと、後遺障害等級認定を受けた人の内、0.87%が、6級の認定を受けています(平成25年度)

後遺障害等級認定を受けることにより、自賠責保険の保障対象は、逸失利益と後遺障害慰謝料を損害賠償として請求することができます。

後遺障害等級7級の8の認定条件とは

等級部位障害の程度
6級視力の障害両眼の視力が0.1以下になったもの
口の障害咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの
耳の障害両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解すことが出来ない程度になったもの
耳の障害1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40cm以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
脊柱及びその他の体幹骨脊柱に著しい変形又は運動を残すもの
上肢の障害1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの
下肢の障害1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの
上肢の障害1手の5の手指又はおや指を含み4の手指を失ったもの

1~8号の傷害部位と認定基準

両眼の視力が0.1以下になった

視力障害については、基準が数値化されているため、後遺症認定においての争いはあまりありませんが、正常な状態でも、両眼の視力が0.1以下の人もいますが、裸眼ではなく矯正視力(眼鏡やコンタクトレンズを装着したであること)、あくまで交通事故が原因で視力に影響が出た場合です。矯正視力で0.1以下というと、労働能力も大幅に喪失すると考えられます。

ものを噛み砕く能力と言語の発音する機能に重大な障害を残すもの

咀嚼とは、食べ物を噛んで飲み込む機能と、言葉を話す機能に障害が残った場合に認定されます。両方とも口や顎あるいは舌といった部位を使う機能ですので、咀嚼機能に障害が出れば言語機能にも影響が出てくるのはよくあることです。咀嚼機能と、言語機能の両方の機能に問題が残った場合に認定されます。

具体的には、柔らかい食物(たとえば、お粥、豆腐、柔らかい肉)は食べることはできますが、歯ごたえのある食材などは食べることができない状態です。

言語の機能に障害を残すものとは、4つの子音のうち2つが発音できなくなった状態が該当します。

4つの子音とは、具体的には次の通りです。
・口唇音/ま行音・ぱ行音・ば行音・わ行音、ふ
・歯舌音/な行音・た行音・ら行音・ざ行音・しゅ・じゅ・し
・口蓋音/か行音・が行音・や行音・ひ・にゅ・ぎゅ・ん
・咽頭音/は行音

咀嚼障害と言語障害どちらか一つが残った場合認定されます。

両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
片耳の聴力を完全に失い、、もう片耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を聞き取ることができない程度になったもの

聴力に関するものは、2つに分類されます。

3号は、両耳の聴力が完全に失われたわけではなく、ほとんど聞こえな状態であれば、認定されます。

単純な音が聞き取れるか(純音)、言葉を言葉として聴き取れるか(明瞭度)の2種類の検査を行い、両耳の平均純音聴力レベルが80dB以上のもの、または、両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上、80dB未満であり、かつ、最高明瞭度が30%以下のものをいいます。

日常生活においては、耳に直接口をあてて大声を出してようやく聞こえる程度ということなります。

4号は、片耳の聴力が完全に失われ、もう片方の耳の聴力が、40センチメートル以上の距離では、普通の声で話される会話が、理解できなくなる程低下すれば認定されます。

1耳の平均純音聴力レベルが90dB以上であり、かつ、他耳の平均純音聴力レベルが70dB以上のものをいいます。

日常生活においては、片耳の耳元付近で、大声すら聞こえない程度の聴力で、もう一方の耳が電話のコール以上の音が聞こえる程度ということになります。

脊柱に重大な変形かもしくは運動する機能に障害を残すもの


交通事故により、脊柱(背骨)が変形して運動機能に障害を残すものが、5号に認定されます。

脊柱(背骨)を構成する一つひとつの骨を脊推といい、脊柱は7つの頸推、12の胸推、5つの腰推、仙推、尾推の26個の推骨から成り立っています。

1、 2個以上の椎体の前方椎体高が当該後方椎体高と比べて減少し、その減少した合計が被災した 2椎体の後方椎体高の50%以上になっていること

2、コブ法による側弯度が50 °以上であるとともに、 1個以上の椎体の前方椎体高が当該後方椎体高と比べ減少し、かつ、その減少した合計が被災した1椎体の50%以上になっていること

※わん曲の測定
側わんカーブのわん曲の程度は、コブ法(右図)という方法で測定します。 コブ法では通常レントゲン写真上に線を描いて角度を測ります。 カーブの頂点になっている椎体(頂椎:ちょうつい、と呼びます) の上と下でそれぞれ最も大きく傾斜した椎体の外縁から直線を延ばし、 その2本の直線の交差する角度(コブ角)でカーブの大きさを表します。 (上図では58°)

片腕の3大関節中の2つの関節がほとんど動かせなくなったもの
片脚の3大関節中の2つの関節がほとんど動かせなくなったもの

3大関節とは、腕の場合は、肩関節・肘関節・手関節をいい、足の場合は、股関節・膝関節・足関節をいいます。骨折などにより、2つの関節機能のみ用を廃した場合に認定されます。

・「関節の用を廃したもの」とは、次のいずれかに該当するものをいいます。
(a) 関節が強直したもの
(b) 関節の完全弛緩性麻痺又はこれに近い状態にあるもの
※ 完全弛緩性麻痺とは、思うように腕を曲げたり伸ばしたりできない状態
(c) 人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの

交通事故で、片手片足の3大関節のうち2つの部位が全く動かなくなった場合、神経障害で自分の意思では動かなくなった場合です。

機能障害が認定されるためには、器質的損傷が必要になり、器質的損傷とは、外見上やレントゲン、MRIなどにより明らかに認識できる損傷をいいます。

片手の全ての指かもしくは親指を含めて4本の指を失ったもの

片手の5本の指を全部なくした場合、おや指を含んだ片手の指4本をなくした場合に認定されます。

1、手指を中手骨または、季節骨で切断したもの
2、近位指節間関節(PIP),おや指の場合指節間関節(IP)において、基節骨と中節骨とを離断(骨を傷つけずに関節部分から分離している状態)したもの

なお、指を失った手が利き手かどうかは関係ありません。

■後遺障害等級9級の損害賠償額の計算例

25歳の会社員

事故前の年収350万円

後遺障害等級6級に該当したとして仮定した場合の後遺障害に関する損害額(弁護士会基準での計算)

後遺障害等級慰謝料・・・1180万円

逸失利益・・・4085万7404円
350万円(基礎収入)×0.67(労働能力喪失率)×17.4232(労働能力喪失期間42年間のライプニッツ係数)=4085万7404円

まとめ

以上のように、後遺障害等級も6級においては、後遺障害の項目も増えて審査も細かくなってきますし、これまでの視力、神経系統、聴力に加え、脊柱に関連する後遺障害の項目も追加され、両四肢の状況に関しても、これまでの「足を失う」「手を失う」から「関節の機能が失われる場合」など、いくらか重篤感は薄れる感じとなります。
しかし、完治はおろか日常生活も今まで通りには程遠いほどの後遺症を抱えなければならないレベルとなる事も多く、実際生活を行う上では多くの困難が予想されます。
医師の判断しだいで等級も変わってくる、分かりにくい症状も含まれ、後遺障害の等級認定の為に受けるべき検査なども早めに把握しているかどうかが大きく影響する可能性があります。

もし等級の認定や補償金に不満がある場合は、弁護士などの専門家にご相談されることをお勧めします。