部位別後遺障害 腕・手の後遺障害

腕、手の後遺障害

後遺障害の分類上、肩、腕、肘、手首、手、指は、「上肢」の後遺障害に分類されます。
上肢は更に、肩の付け根の部分から手首の手関節までの「上肢」と、手から指までの「手指」に分類されます。
この、肩から指先までの範囲には3大関節と呼ばれる、肩関節、肘関節、手関節があります。
患部が肩から指先までの範囲であれば、関節が曲がりにくい、腕を切断した、指の一部がなくなってしまった、などの症状は全てこの上肢の後遺障害に含まれるのです。

上肢の障害で認定される後遺障害の等級は?

表で等級の一覧です。専門用語が多いので、細かくはそれぞれ下の解説をご参照ください。

等級障害の程度
上肢欠損障害1級3号両上肢を肘関節以上で失った
2級3号両上肢を手関節以上で失った
4級4号1上肢を肘関節以上で失った
5級4号1上肢を手関節以上で失った
機能障害1級4号両上肢の用を全廃した
5級6号1上肢の用を全廃した
6級6号1上肢の3大関節中の2関節の用を廃した
8級6号1上肢の3大関節中の1関節の用を廃した
10級10号1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残す
12級6号1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残す
変形障害7級9号1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残す
8級8号1上肢に偽関節を残す
12級8号長官骨に変形を残す
手指欠損障害3級5号両手の手指の全部を失った
6級8号1手の5の手指又は母指を含み4の手指を失った
7級6号1手の母指を含み3の手指又は母指以外の4の手指を失った
8級3号1手の母指を含み2の手指又は母指以外の3の手指を失った
9級12号1手の母指又は母指以外の2の手指を失った
11級8号1手の示指、中指又は環指を失った
12級9号1手の小指を失った
13級7号1手の母指の指骨の一部を失った
14級6号1手の母指以外の手指の指骨の一部を失った
機能障害4級6号両手の手指の全部の用を廃した
7級7号1手の5の手指又は母指を含み4の手指の用を廃した
8級4号1手の母指を含み3の手指又は母指以外の4の手指の用を廃した
9級13号1手の母指を含み2の手指又は母指以外の3の手指を廃した
10級7号1手の母指又は母指以外の2の手指の用を廃した
12級10号1手の示指、中指又は環指の用を廃した
13級6号1手の小指の用を廃した
14級7号1手の母指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなった

 

腕、手の後遺障害の種類

後遺障害は、部位と種類によって分類されています。
部位は、上肢の後遺障害の中でも、肩の付け根の部分から手首の手関節までの「上肢」と、手首から指までの「手指」という2つの部位に分けられています。
種類は、身体の一部を失ってしまう欠損障害、関節の曲げ伸ばしを中心として身体の機能に不備が残ってしまう機能障害、骨折が正常に治癒せず、本来曲がるべきでない場所が曲がる状態になったり、骨が曲がったまま治癒してしまったりした変形障害、この3つに分類されているのです。

上の等級表では専門用語で書かれていてわかりにくいので、それぞれ解説していきます。

肩から手首までの欠損障害

第1級6号 両腕を肘の関節より上(肩側)で失った場合
第2級3号 両腕を手首の関節より上(肘側)で失った場合
第4級4号 片腕を肘の関節より上(肩側)で失った場合
第5級2号 片腕を手首の関節より上(肘側)で失った場合

肘の関節より上で失った場合というのは
1.肩関節で肩甲骨と上腕骨の間で離断されて失われた
2.肩関節と肘関節の間で切断されて失われた
3.肘関節において、上腕骨(肩関節から肘関節までの太い骨です)と
橈骨及び尺骨(どちらも肘から手首の骨です)の間で離断されて失われた
これら3つのどれかに当てはまる場合を言います。

手首の関節より上で失った場合というのは
1.肘関節と手首の関節の間で切断されて失われた
2.手首の関節において、橈骨及び尺骨と、手の骨の間で切断されて失われた
これら2つのどちからに当てはまる場合を言います。

切断とは途中で切り離すこと、離断とは何かと何かの間で切り離す事を言います。
この場合、骨の途中などで切り離された場合は切断、関節や骨の間の部分であれば離断となります。

手首から指先までの欠損障害

第3級5号 両手の全ての指を失った場合
第6級7号 片手の全ての指、もしくは親指を含めて4本の指を失った場合
第7級6号 片手の親指を含めて3本の指、もしくは親指以外の4本の指を失った場合
第8級3号 片手の親指を含めて2本の指、もしくは親指以外の3本の指を失った場合
第9級8号 片手の親指、もしくは親指以外の2本の指を失った場合
第11級6号 片手の人差し指、中指、もしくは薬指のどれかを失った場合
第12級8号 片手の小指を失った場合
第13級5号 片手の親指の骨の一部を失った場合
第14級6号 片手の親指以外の指の骨の一部を失った場合

親指の場合は第一関節、それ以外の場合は第二関節以上の場所で失った場合、指を失った、と言い、
それ以下の場合は、骨の一部を失った、と言います。

 

肩から手首までの機能障害

第1級7号  両腕の3大関節(肩関節、肘関節、手関節)全てが動かせなくなってしまった場合※1
第5級4号  片腕の3大関節(肩関節、肘関節、手関節)全てが動かせなくなってしまった場合※1
第6級5号  片腕の3大関節(肩関節、肘関節、手関節)のうち2箇所が動かせなくなってしまった場合※2
第8級5号  片腕の3大関節(肩関節、肘関節、手関節)のうち1箇所が動かせなくなってしまった場合※2
第10級9号 片腕の3大関節(肩関節、肘関節、手関節)のうち1箇所の関節の機能に大きな障害が残った場合※3
第12級6号 片腕の3大関節(肩関節、肘関節、手関節)のうち1箇所の関節の機能に障害が残った場合※4

※1には、上腕神経叢の完全麻痺も含まれます。

※2に関しては、
1.関節が固まってしまったもの
2.関節の完全弛緩性麻痺、又はこれに近い状態(健常な側の1/10以下の角度しか動かせなくなった場合)
これらの2つのどちらかに当てはまるものをいいます。

※3に関しては、
1.健常な側の1/2以下の角度しか動かせなくなったもの
2.人工関節・人工骨頭を挿入した関節において※2に当てはまらないもの
これらの2つのどちらかに当てはまるものをいいます。

※4に関しては、
健常な側の3/4以下の角度しかうごかせなくなったものをいいます。

手首から指先までの機能障害

第4級6号  両手の全ての指において、指が以下a~dのどれかに当てはまる状態になった場合
第7級7号  片手の全ての指もしくは、親指を含めた4本の指が以下a~dのどれかに当てはまる状態になった場合
第8級4号  片手の親指を含めた3本の指もしくは親指以外の4本の指が以下a~dのどれかに当てはまる状態になった場合
第9級9号  片手の親指を含めた2本の指もしくは親指以外の3本の指が以下a~dのどれかに当てはまる状態になった場合
第10級6号 片手の親指または親指以外の2本の指が以下a~dのどれかに当てはまる状態になった場合
第12級9号 片手の人差し指、中指又は薬指のどれかが以下a~dのどれかに当てはまる状態になった場合
第13級4号 片手の小指が以下a~dのどれかに当てはまる状態になった場合
第14級7号 片手の親指以外の指の第一関節が、曲げ伸ばしができなくなってしまった場合

a.指の先端の骨を長さ半分以上失った
b.指の付け根の関節もしくは第二関節(親指の場合は第一関節)が、健康な側の同じ指と比較して、動かせる角度が半分以下に制限されてしまった
c.親指に関して、 橈骨外転又は掌側外転と言われる動きが、健常な側の指の親指と比較して動かせる角度が半分以下に制限されてしまった
d.指の先端から第一関節までの部分の、指の腹の部分と側面の部分における、皮膚表面の感覚と、皮膚より深い部分の感覚が完全に失われてしまった

 

機能障害の検査

関節の機能障害と、動かせる角度(可動域角度といいます)の計測方法は厳密に決まっています。

ゴーニオメーターと呼ばれる専用の角度計を用い、5°単位で切り上げて計測されます。
日本整形外科学会によって、それぞれの関節によって正常とされる屈曲角度が定められており、たとえば肘関節は屈曲145°が正常となります。
また、関節によっては主要運動と呼ばれる動きの他に、参考運動と呼ばれる動きが設定されているものもあり、たとえば肩関節の主要運動は屈曲、外転、内転であり、参考運動は伸展、外旋、内旋です。

※図

 

肩から手首までの変形障害

第7級9号   片腕の、上腕骨もしくは、橈骨と尺骨両方に癒合不全が残っていて、硬性補装具を必要とする場合
第8級8号   片腕の、上腕骨もしくは、橈骨と尺骨両方に癒合不全が残っていて、硬性補装具を常に必要とするわけではない場合
第12級8号 上腕骨、橈骨または尺骨が15°以上曲がってままくっついてしまった場合

 

上肢,手指の後遺障害での慰謝料の目安

後遺障害慰謝料

等級自賠責保険金後遺障害
1級 3,000万円両上肢をひじ関節以上で失ったもの
両上肢の用を全廃したもの
2級2,950万円両上肢を手関節以上で失ったもの
3級2,219万円両手の手指の全部を失ったもの
4級1,889万円1上肢を肘関節以上で失ったもの
両手の手指の全部の用を廃したもの
5級1,574万円1上肢を手関節以上で失ったもの
1上肢の用を全廃したもの
6級1,296万円1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの
1手の5の手指又はおや指を含み4の手指を失ったもの
7級1,051万円1手の親指を含み3の手指を失ったもの又はおや指以外の4の手指を失ったもの
1手の5の手指または親指を含み4の手指の用を廃したもの
1上肢に偽関節を残し,著しい運動障害を残すもの
8級819万円1手の親指を含み2の手指を失ったもの又はおや指以外の3の手指を失ったもの
1手のおや指を含み3の手指の用を廃したもの又は親指以外の4の手指の用を廃したもの
1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
1上肢に偽関節を残すもの
9級616万円1手のおや指又はおや指以外の2の手指を失ったもの
1手のおや指を含み2の手指の用を廃したものまたは親指以外の3の手指の用を廃したもの
10級461万円1手のおや指又はおや指以外の2の手指の用を廃したもの
1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
11級331万円1手のひとさし指,中指,薬指を失ったもの
12級224万円1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
長管骨に変形を残すもの
1手の小指を失ったもの
1手の人差し指,中指,薬指の用を廃したもの
13級139万円1手の小指の用を廃したもの
1手の親指の指骨の一部を失ったもの
14級75万円上肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの
1手の親指以外の手指の指骨を一部失ったもの
1手の親指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの

通院慰謝料

原則として、入通院期間を基礎として以下の表を使用して計算することになっています。
入院のみの場合は、例えば入院期間が5ヶ月なら、以下の表に従って217万円となります。
通院のみの場合は、例えば通院期間が5ヶ月なら、以下の表に従って105万円となります。
入院後に通院した場合は、例えば入院5ヶ月に通院5ヶ月なら、該当する月が交わる箇所、つまり257万円となります。

障害の部位や程度、特に生死の危機がある場合の継続、極度の苦痛を伴う手術などは増額の理由になることがあります。また、幼児を持つ母親であったり、仕事の都合などにより被害者側の事情により入院期間を短縮したと認められた場合も増額になることがあります。

  入院1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月13月14月15月
 通院53101145184217244266284297306314321328334340
1月2877 122162199228252274291303311318325332336342
2月5298139177210236260281297308315322329334338344
3月73115154188218244267287302312319326331336340346
4月90130165196226251273292306316323328333338342348
5月105141173204233257278296310320325330335340344350
6月116149181211239362282300314322327332337342346
7月124157188217244266286304316324329334339344
8月132164194222248270290306318326331336341
9月139170199226252274292308320328333 338
10月145175203230256276294310322330335
11月150179207234258278296312324332
12月154183211236260280298314326
13月158187213238262282300316
14月162189215240264284302
15月164191217242266286

※表の金額の単位は 万円です。

逸失利益

逸失利益は、後遺障害が残ってしまったことによって、本来これから得られるはずだったのに受けられなくなってしまった利益の事です。
基本的に、後遺障害の等級によって定められている労働能力喪失率と、
労働能力喪失期間(通常症状固定時から67歳までの期間)によって決められます。

年齢就労可能年数ライプニッツ係数
18才49年18.169
19才48年18.077
20才47年17.981
21才46年17.88
22才45年17.774
23才44年17.663
24才43年17.546
25才42年17.423
26才41年17.294
27才40年17.159
28才39年17.017
29才38年16.868
30才37年16.711
31才36年16.547
32才35年16.374
33才34年16.193
34才33年16.003
35才32年15.803
36才31年15.593
37才30年15.372
38才29年15.141
39才28年14.898
40才27年14.643
41才26年14.375
42才25年14.094
43才24年13.799
44才23年13.489
45才22年13.163
46才21年12.821
47才20年12.462
48才19年12.085
49才18年11.69
50才17年11.274
51才16年10.838
52才15年10.38
53才14年9.899
54才13年9.394
55才12年8.863
56才12年8.863
57才11年8.306
58才11年8.306
59才11年8.306
60才10年7.722
61才10年7.722
62才9年7.108
63才9年7.108
64才9年7.108
65才8年6.463
66才8年6.463
67才8年6.463
68才7年5.786
69才7年5.786
70才6年5.076
71才6年5.076
72才6年5.076
73才6年5.076
74才5年4.329
75才5年4.329
76才5年4.329
77才4年3.546
78才4年3.546
79才4年3.546
80才4年3.546
81才4年3.546
82才3年2.723
83才3年2.723
84才3年2.723
85才3年2.723
86才3年2.723
87才3年2.723
88才2年1.859
89才2年1.859
90才2年1.859
91才2年1.859
92才2年1.859
93才2年1.859
94才2年1.859
95才2年1.859
96才2年1.859
97才~1年0.952

基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間×ライプニッツ係数

という式になります。
本来一定の期間の中で得る収入を、一括で最初に得る事になるので、中間利息分が控除されます。
その分の計算の為にライプニッツ係数が用いられるのです。

この労働能力喪失率と労働能力喪失期間は、職業や後遺障害の状態、部位などの兼ね合いによって、裁判で通常以上に認められた例もあり、それぞれの場合にどのような主張をしていくべきかは、弁護士でなければ中々判断の難しいところです。

ご相談について

逸失利益や通院慰謝料の項で少し触れましたが、これらの費用の計算はあくまで基本です。交通事故と一口にいっても、状況はそれぞれ全く違い、一概に同じようには判断出来ない場合も多くあります。それぞれ状況に応じて細かい規定や、判例などを踏まえて主張しかなければ本来受けられる十分な補償を受けられない、ということも大いに有り得る事です。
コレクト法律事務所は交通事故を多く取り扱っており、豊富な経験に基きご相談を承ります。ご相談は無料で承っていますので、ぜひ一度ご連絡ください。