部位別後遺障害 口・歯牙の後遺症

口・歯の後遺障害

口、歯にも後遺障害の認定があります。口の方は主に咀嚼(食べ物を噛んで砕く働き)の働きや、言語の発音の働きを基準に、歯に関しては欠損とそれを補うための補綴という処理によって判断されます。
咀嚼の働きの基準はそれほど複雑ではありませんが、咀嚼と言語の障害は両者を組み合わせて認定されるので、言語の後遺障害の認定もあわせてご確認ください。

口・歯の後遺障害等級表

障害の種類等級障害の内容
咀嚼及び言語の機能障害第1級そしゃく及び言語の機能を廃したもの
第3級そしゃく又は言語の機能を廃したもの
第4級そしゃく及び言語の機能に著しい障害を残すもの
第6級そしゃく又は言語の機能に著しい障害を残すもの
第9級そしゃく及び言語の機能に障害を残すもの
第10級そしゃくまたは言語の機能に障害を残すもの
歯牙の障害第10級14歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
第11級10歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
第12級7歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
第13級5歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
第14級3歯以上に対し歯科補綴を加えたもの

口・歯の後遺障害の種類

口と歯の後遺障害は、咀嚼と言語の機能の障害、歯の障害、味覚の障害に分けられます。それぞれの条件は下記をご参照ください。

咀嚼と言語の機能障害

咀嚼の働きと、言語の働きの組み合わせで後遺障害が認定されますので、①~⑥の条件をあわせてご確認ください。

第1級 ①かつ④の場合
第2級 ①かつ⑤の場合
第3級 ①または④の場合
第4級 ②かつ⑤の場合
第5級 ②かつ⑥の場合
第6級 ②または⑤の場合
第9級 ③かつ⑥の場合
第10級 ③または⑥の場合

①咀嚼の機能を失った場合というのは、流動食以外摂取出来ない状態を言います。
②咀嚼の機能に大きな障害を残す場合というのは、粥またはそれに準ずるもの以外摂取出来ない状態を言います。
③咀嚼の機能に障害を残す場合というのは、固形食物のなかに咀嚼できない、或いは十分に咀嚼できないものがあり、それが医学的に確認出来る状態を言います。

④言語の機能を失った場合というのは、4種類の言葉の発音(交信音、歯舌音、口蓋音、咽頭音)のうち3種類が発音不能な場合を言います。
⑤言語の機能に大きな障害を残す場合というのは、4種類の言葉の発音のうち2種類が発音不能な場合、もしくは綴音(子音と母音を組み合わせるなどの発音)障害により言語のみでは意思の疎通が出来ない場合を言います。
⑥言語の機能に障害を残す場合というのは、4種類の音のうち1種類が発音不能な場合を言います。

これら①~⑥の、咀嚼の機能の障害と、言語の機能の障害を状況をそれぞれ組み合わせて下記のような後遺障害等級表となります。

歯牙の障害

第10級 14本以上の歯に対して歯科補綴を加えた場合
第11級 10本以上の歯に対して歯科補綴を加えた場合
第12級 7本以上の歯に対して歯科補綴を加えた場合
第13級 5本以上の歯に対して歯科補綴を加えた場合
第14級 3本以上の歯に対して歯科補綴を加えた場合

歯科補綴というのは、歯をうしなったり、歯の大部分が欠損した歯を補う為に加えられる、人口物を使用した治療のことです。
有床義歯(要するに入れ歯のことです)や架橋義歯(ブリッジと呼ばれる処置です)などの場合、入れ歯固定の鈎を装着するだけの歯や、ブリッジを支持する為の台となるだけの歯は、補綴した本数に数えません。また、喪失した歯が大きかったり隙間が大きかった為に、喪失した本数と義歯の本数が異なる場合は、喪失した本数によって等級の認定を行います。

味覚の障害

頭部の外傷や、その他顎の周囲の損傷、下の損傷によって、味覚が失われた場合は味覚脱失として第12級を認定します。
味覚が失われないまでも、衰えてしまった場合は味覚減退として第14級を認定します。

それぞれ、濾紙ディスク法という検査ににおける最高濃度液による検査において、基本4味覚である甘味、塩味、酸味、苦味の全てが認知できない場合は味覚脱失、一つ以上を認知できないものを味覚減退とします。味覚障害の認定は、多くの場合症状が時間経過によって回復される場合が多いので、原則として療養終了から6ヶ月後に認定するものとされます。

濾紙ディスク法の検査は、上述の、甘味、塩味、酸味、苦味の4種類の味がついた濾紙を舌の上において味覚を検査する方法です。

味覚が失われ、或いは衰えてしまっても、記憶によって補われてしまう部分が大きいため、味覚障害は自覚しにくいものです。周囲の方が注意深く観察されないと、見逃してしまう可能性があります。

 

口の後遺障害の慰謝料の目安

後遺障害慰謝料

参考になります、自賠責保険の金額の表を掲載します。

1級3,000万円そしゃく及び言語の機能を廃したもの
3級2,219万円そしゃく又は言語の機能を廃したもの
4級1,889万円そしゃく及び言語の機能に著しい障害を残すもの
6級1,296万円そしゃく又は言語の機能に著しい障害を残すもの
9級616万円そしゃく及び言語の機能に障害を残すもの
10級461万円そしゃく又は言語の機能に障害を残すもの
14歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
11級331万円10歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
12級224万円7歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
13級139万円5歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
14級75万円3歯以上に対し歯科補綴を加えたもの

入通院慰謝料

入通院の慰謝料は、入院と通院の日数によって計算されますが、その基準は複数あります。複雑になってしまうので割愛しますが、最低限度とも言える自賠責保険基準、それよりは高いですよと保険会社側が提案してくる任意保険基準、そして弁護士が過去の裁判例を踏まえて使用する弁護士基準です。
通常、慰謝料の相場を知っている人などほとんどいませんので、保険会社の提案する任意保険基準で示談をしてしまう場合が多いですが、弁護士費用を考慮しても、基本的に弁護士基準の方が多くを貰えるほど差があります。

  入院1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月13月14月15月
 通院53101145184217244266284297306314321328334340
1月2877 122162199228252274291303311318325332336342
2月5298139177210236260281297308315322329334338344
3月73115154188218244267287302312319326331336340346
4月90130165196226251273292306316323328333338342348
5月105141173204233257278296310320325330335340344350
6月116149181211239362282300314322327332337342346
7月124157188217244266286304316324329334339344
8月132164194222248270290306318326331336341
9月139170199226252274292308320328333 338
10月145175203230256276294310322330335
11月150179207234258278296312324332
12月154183211236260280298314326
13月158187213238262282300316
14月162189215240264284302
15月164191217242266286

 逸失利益

逸失利益というのはこの場合、本来得られるはずだったけれども、事故による後遺障害で得られなくなってしまった利益のことです。
基礎収入、労働能力喪失率、労働能力喪失期間とそれに対応したライプニッツ係数によって計算され、労働能力喪失率と労働能力喪失期間は基本的に後遺障害の種類と等級によって決められています。しかしながら、後遺障害の部位や症状が仕事と密接に関連する場合には、そうでない場合以上に逸失利益が大きいと考えられますし、また平均的な年齢よりもより長く続けられるであろう職業だった場合には、労働能力喪失期間はより長くなると考える事ができるなど、状況によって判断が異なってくる場合もままあります。この場合の権利は、きちんと主張しなければ認められる事はありません。保険会社の交渉担当者から言い出してくれる事は無いのです。
こんな場合はどうなのか、自分の場合はより多くの補償を受けられるべきなのではないか、そういった疑問があれば、まずは弁護士にご相談ください。

年齢就労可能年数ライプニッツ係数
18才49年18.169
19才48年18.077
20才47年17.981
21才46年17.88
22才45年17.774
23才44年17.663
24才43年17.546
25才42年17.423
26才41年17.294
27才40年17.159
28才39年17.017
29才38年16.868
30才37年16.711
31才36年16.547
32才35年16.374
33才34年16.193
34才33年16.003
35才32年15.803
36才31年15.593
37才30年15.372
38才29年15.141
39才28年14.898
40才27年14.643
41才26年14.375
42才25年14.094
43才24年13.799
44才23年13.489
45才22年13.163
46才21年12.821
47才20年12.462
48才19年12.085
49才18年11.69
50才17年11.274
51才16年10.838
52才15年10.38
53才14年9.899
54才13年9.394
55才12年8.863
56才12年8.863
57才11年8.306
58才11年8.306
59才11年8.306
60才10年7.722
61才10年7.722
62才9年7.108
63才9年7.108
64才9年7.108
65才8年6.463
66才8年6.463
67才8年6.463
68才7年5.786
69才7年5.786
70才6年5.076
71才6年5.076
72才6年5.076
73才6年5.076
74才5年4.329
75才5年4.329
76才5年4.329
77才4年3.546
78才4年3.546
79才4年3.546
80才4年3.546
81才4年3.546
82才3年2.723
83才3年2.723
84才3年2.723
85才3年2.723
86才3年2.723
87才3年2.723
88才2年1.859
89才2年1.859
90才2年1.859
91才2年1.859
92才2年1.859
93才2年1.859
94才2年1.859
95才2年1.859
96才2年1.859
97才~1年0.952

ご相談について

交通事故は、後遺障害の等級と過失割合だけで考えればそこまで複雑でないようにも思えます。しかしながら、どのような仕事をしているのか、そこに後遺障害がどういう不便をもたらすのか、休む事で仕事にどういう影響が出たのか等、個々の被害者の方の状況を丁寧にみていけば、交通事故は非常に複雑なものです。
コレクト法律事務所は交通事故を数多く取り扱っており、様々なご相談を承ってきた経験があります。相談は無料となっていますので、ご自身のケースの場合はどうなのか、本当に弁護士に依頼して得になるのか、まずはお気軽にご連絡・ご相談ください。お待ちしております。