後遺障害等級認定によって得られるメリットと異議の申立て

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交通事故の被害者の方は、後遺症が残る事は考えていらっしゃらないかも知れませんが、不幸にも傷跡が残ってしまった、痛みが残ってしまった、骨が変形してしまった等、一生、その後遺障害と付き合っていかなければならないなりません、交通事故で、苦しみを味わっても後遺障害等級認定がされるのか、されないのかによって大きく賠償額が異なります。
適正な等級認定がされるべき交通事故は、適正な等級認定をもらい、それに見合った賠償金を獲得しましょう。

 

後遺障害等級認定によって得られるメリットと異議の申立てについてご説明しましょう。

後遺障害等級獲得のメリット

後遺障害等級が認定されると、以下のような効果(メリット)があります。

〈後遺障害等級に認定されるメリットは損害額が飛躍的に上がる〉

1、後遺障害逸失利益が請求できる

後遺障害逸失利益とは、後遺障害がなければ得られていたであろう収入等の利益のことを逸失利益といいます。

2、後遺障害慰謝料が請求できる

後遺症を抱えて生きていくことに対する精神的苦痛に対して支払われるものです。

※後遺障害等級が認定されると、その等級に応じた後遺障害逸失利益と後遺障害慰謝料を請求できる根拠となり、逆に言えば後遺障害等級が認定されなければ、後遺障害逸失利益と後遺障害慰謝料は請求することできません。

事例:後遺障害賠償金の例 30歳男性 年収400万の場合
むち打ち症14級 190万円  12級 700万円
高次脳機能障害9級 3,000万円 7級 4,700万円

金額交渉のベースとなる後遺障害等級は、交通事故損害賠償において最も重要なことである思われます。

3、自賠責保険からの支払額を先取りできる

後遺障害等級が認定されることにより、後遺障害部分の賠償のうちの自賠責保険から支払われる分については、被害者の方が請求をすることにより、相手側保険会社と交渉を始めるま前に先取りすることができます。
後遺障害等級の申請を被害者の方が請求を行った場合の他、後遺障害等級の申請を任意保険会社に任せる「事前認定」で行ったとしても、その後後遺障害分について被害者者の方が請求をすれば、相手側任意保険会社と示談が済んでいなくても、自賠責分を先に受け取ることができます。
金額で言うと、14級であれば75万円、12級であれば224万円であり、それを上回る部分について、改めて任意保険会社と示談交渉をします。

4、その他の保険金の請求

自賠責の後遺障害等級が認定されることにより、相手からの損害賠償金の他に、自分が加入している損害保険や生命保険から支払いを受けられることがあります。
自分の自動車の搭乗者傷害保険等が考えられますが、その他にも自分が加入している保険は全て証券や約款を確認しましょう。

 

交通事故の後遺障害と認められるためには

「後遺障害等級表で何等級なのか?」の大前提として、以下の4つが必ず必要になります。後遺障害診断書だけで後遺障害等級表の基準に合致するとしても、そこに至るまでの経緯で以下の4つが伴わなければ後遺障害の認定は非該当となります。

1、回復が難しいと思われる障害(将来においても回復の見込みがないもの)
2、後遺障害が医学的に証明されている事
3、交通事故と相当因果関係があること
4、労働能力の喪失を伴うもの

一般的に後遺障害が残ったとしても、残存したすべての症状が、交通事故における後遺障害であると認められるわけではありません。下記の「後遺障害別等級表」に該当する後遺障害が交通事故の後遺障害であると認められることになります。
後遺障害別等級表
別表第1

等 級介護を要する後遺障害保険金額喪失率
第1級1 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要する4,000万円100%
2 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要する
第2級1 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要する3,000万円100%
2 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要する

別表第2

等級介護を要する後遺障害保険金額喪失率
第1級1 両眼が失明した3,000万円100%
2 咀嚼及び言語の機能を廃した
3 両上肢をひじ関節以上で失った
4 両上肢の用を全廃した
5 両下肢をひざ関節以上で失った
6 両下肢の用を全廃した
第2級1 1眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になった2,590万円100%
2 両眼の視力が0.02以下になった
3 両上肢を手関節以上で失った
4 両下肢を足関節以上で失った
第3級1 1眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になった2,219万円100%
2 咀嚼又は言語の機能を廃した
3 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができない
4 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができない
5 両手の手指の全部を失った
第4級1 両眼の視力が0.06以下になった1,889万円92%
2 咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残す
3 両耳の聴力を全く失った
4 1肢をひじ関節以上で失った
5 1下肢をひざ関節以上で失った
6 両手の手指の全部の用を廃した
7 両足をリスフラン関節以上で失った
第5級1 1眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になった1,574万円79%
2 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができない
3 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができない
4 1上肢を手関節以上で失った
5 1下肢を足関節以上で失った
6 1上肢の用を全廃した
7 1下肢の用を全廃した
8 両足の足指の全部を失った
第6級1 両眼の視力が0.1以下になった1,296万円67%
2 咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残す
3 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になった
4 1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になった
5 脊柱に著しい変形又は運動障害を残す
6 1上肢の3大関節中の2関節の用を廃した
7 1下肢の3大関節中の2関節の用を廃した
8 1手の5の手指又はおや指及びを含み4の手指を失った
第7級1 1眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になった1,051万円56%
2 両耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になった
3 1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になった
4 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができない
5 胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができない
6 1手のおや指を含み3の手指をを失った又はおや指以外の4の手指を失った
7 1手の5の手指又はおや指を含み4の手指の用を廃した
8 1足をリスフラン関節以上で失った
9 1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残す
10 1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残す
11 両足の足指の全部の用を廃した
12 女子の外貌に著しい醜状を残す
13 両側の睾丸を失った
第8級1 1眼が失明し、又は1眼の視力が0.02以下になった819万円45%
2 脊柱に運動障害を残す
3 1手のおや指を含み2の手指を失った又はおや指以外の3の手指を失った
4 1手のおや指を含み3の手指の用を廃した又はおや指以外の4の手指の用を廃した
5 1下肢を5センチメートル以上短縮した
6 1上肢の3大関節中の1関節の用を廃した
7 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃した
8 1上肢に偽関節を残す
9 1下肢に偽関節を残す
10 1足の足指の全部を失った
11 脾臓又は1側の腎臓を失った
第9級1 両眼の視力が0.6以下になった616万円35%
2 1眼の視力が0.06以下になった
3 両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残す
4 両眼のまぶたに著しい欠損を残す
5 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残す
6 咀嚼及び言語の機能に障害を残す
7 両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になった
8 1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になった
9 1耳の聴力を全く失った
10 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限される
11 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当にな程度に制限される
12 1手のおや指又はおや指以外の2の手指をを失った
13 1手のおや指を含み2の手指の用を廃した又はおや指以外の3の手指の用を廃した
14 1足の第1の足指を含み2以上の足指を失った
15 1足の足指の全部の用を廃した
16 生殖器に著しい障害を残す
第10級1 1眼の視力が0.1以下になった461万円27%
2 正面を見た場合に複視の症状を残す
3 咀嚼又は言語の機能に障害を残す
4 14歯以上に対し歯科補綴を加えた
5 両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になった
6 1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になった
7 1手のおや指又はおや指以外の2の手指の用を廃した
8 1下肢を3センチメートル以上短縮した
9 1足の第1の足指又は他の4の足指を失った
10 1上肢の3大関節中の3関節の機能に著しい障害を残す
11 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残す
第11級1 両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残す331万円20%
2 両眼のまぶたに著しい運動障害を残す
3 1眼のまぶたに著しい欠損を残す
4 10歯以上に対し歯科補綴を加えた
5 両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になった
6 1耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になった
7 脊柱に変形を残す
8 1手のひとさし指、なか指又はくすり指を失った
9 1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃した
10 胸腹部臓器に障害を残す
第12級1 1眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残す224万円14%
2 1眼のまぶたに著しい運動障害を残す
3 7歯以上に対し歯科補綴を加えた
4 1耳の耳殻の大部分を欠損した
5 鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残す
6 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残す
7 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残す
8 長管骨に変形を残す
9 1手のこ指を失った
10 1手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃した
11 1足の第2の足指を失った、第2の足指を含み2の足指を失った又は第3の足指以下の3の足指を失った
12 1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃した
13 局部に頑固な神経症状を残す(高次脳機能障害としては労災基準適用のみにかかる)
14 男子の外貌に著しい醜状を残す
15 女子の外貌に醜状を残す
第13級1 1眼の視力が0.6以下になった139万円9%
2 正面以外を見た場合に複視の症状を残す
3 1眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残す
4 両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残す
5 5歯以上に対し歯科補綴を加えた
6 1手のこ指の用を廃した
7 1手のおや指の指骨の一部を失った
8 1下肢を1センチメートル以上短縮した
9 1足の第3の足指以下の1又は2の足指を失った
10 1足の第2の足指の用を廃した、第2の足指を含み2の足指の用を廃した又は第3の足指以下の3の足指の用を廃した
第14級1 1眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残す75万円5%
2 3歯以上に対し歯科補綴を加えた
3 1耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になった
4 上肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残す
5 下肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残す
6 1手のおや指以外の手指の指骨の一部を失った
7 1手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなった
8 1足の第3の足指以下の1又は2の足指の用を廃した
9 局部に神経症状を残す(高次脳機能障害としては労災基準適用のみにかかる)
10 男子の外貌に醜状を残す

〈備考〉
1.視力の測定は、万国式試視力表による、屈折異常のあるものについては、矯正視力について測定する。
2.手指を失ったものとは、おや指は指節間関節、その他の手指は近位指節間節以上を失ったものをいう。
3.手指の用を廃したものとは、手指の末節骨の半分以上を失い、又は中手指節関節若しくは近位指節間関節(おや指にあっては、指節間関節)に著しい運動障害を残すものをいう。
4.足指を失ったものとは、その全部を失ったものをいう。
5.足指の用を廃したものとは、第一の足指は末節骨の半分以上、その他の足指は遠位指節間関節以上を失ったもの又は中足指節若しくは近位指間関節(第一の足指にあっては指節間関節)に著しい運動機能を残すものをいう。
6.各等級の後遺障害に該当しない後遺障害であって、各等級の後遺障害に相当するものは、当該等級の後遺障害とする。
(注1)後遺障害が2つ以上あるときは、重い方の後遺障害のの該当する等級による。しかし、下記に揚げる場合においては次の通り繰り上げる。

➀第13級以上に該当する後遺症が2つある時は、重い方の後遺障害の等級を繰り上げる。ただし、それぞれの後遺障害に該当する保険金額の合算額が繰り上げ後遺障害の保険金額を下回るときはその合算額を保険金額として採用する。
➁第8級以上に該当する後遺障害が2つ以上あるときは、重い方の後遺障害の等級を2級繰り上げる。
➂第5級以上に該当する後遺障害が2つ以上あるときは、重い方の後遺障害の等級を3級繰り上げる。
(注2)すでに後遺障害のある者がさらに同一部位について後遺障害の程度を加重したときは、加重後の等級に応じる保険金額から既にあった後遺障害の等級に応じ保険金額を控除した金額を保険金額とする。

 

 

下記の場合は認定される可能性は少ないケース

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・各診断書における症状部位ごとの症状に整合性がない
・傷病名と検査所見に矛盾がある
・画像や写真などの客観的な資料から器質的変化、異常所見などが読み取れない
・診断の根拠が被害者の自覚症状に偏っている
・神経学的な判断がなされていない

 

認定されにくい後遺障害についての準備

認定されにくい後遺障害は、症状固定前からの準備が重要となり、 「適正な治療を受けておくこと」が必要があり、その傷病と症状に合った治療を、適切な期間受けることが大事なことです。「そんなことは医師の指示とおりにしていればいいのでは?」と思われる かもしれませんが、通院指示は医師により違いがあり「毎日来るように」という人もいれば「来れるときに来ればいいですよ」という医師もいるため、 あてにならないことが多いのです。まずは、専門医において、適切な治療を受けることが大切です。

しかし、きちんと治療していれば、妥当な等級付けがされると考えるのは、いくつかの選択ミスが重なり、本来認定されるべきであるのに、 どうしても後遺障害等級が認定されずに苦労している方は大勢います。特にむち打ち症の場合は注意が必要になりますので、ご注意下さい。

以上のように後遺障害に認定されると、損害賠償額が一気に上がりますので、納得した損害賠償額を得られることから、後遺障害等級認定がもつ意味は、非常に大きいと思います。損害賠償金の大部分を占める後遺障害慰謝料などが貰えなければ、多額の治療費を負担することになってしまいますので、後遺障害等級認定は、必ず獲得しましょう。

後遺障害等級認定を受けることがどれだけ重要なことは、何度もご説明しましたが、その最も重要な要素は損害賠償金の請求に関わることです。もし、後遺障害等級認定が下りなかった場合、先程もご説明しましたように「後遺障害慰謝料」「逸失利益」などの損害賠償金が全く支払われないことになります。

先程、‘交通事故の後遺障害と認められるためには’で、ご説明しましたように後遺症の4つの基準に該当しない場合は等級認定が認められないと考えられます。
認定される可能性は、少ないケースでご説明した内容の証明ができない限り、後遺障害の異議の申立てをしても後遺障害の認定はむずかしいと考えられます。

傾向としては異議申立によって等級変更に至る見込みは厳しいのが実情ですが、可能性はないわけではありませんので、できることはすべきであると考えられ、納得のいく等級でない場合は、簡単にあきらめることはせず、 異議申立てをすべきかどうか検討しましょう。

 

 

後遺障害認定の異議申立てを行う3つの方法

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後遺障害認定結果を争う方法には、「自賠責の後遺障害認定結果に対する異議申立て」、「自賠責紛争処理機構への申請」、「裁判」の3つの方法があります。

手続を行う順番
1.自賠責保険会社に対し異議申立て
2.自賠責紛争処理機構への申請
3.裁判(訴訟)となります。
以下では、それぞれの手続について説明いたします。

1.自賠責保険会社に対し後遺障害認定結果に対する異議申立て

自賠責保険会社に異議を申し立てる場合、「被害者請求」と「事前認定」という2つの方法があります。

「被害者請求」の形式で行う場合には、自賠責保険会社に対して異議申立書を提出し、損保料率機構に書類が送られ審査が行われます。「被害者請求」は、自らが動いて請求するので透明性が高く、等級に応じた自賠責限度額を保険会社との示談を待たずに先取りできるなどのメリットがあります。

「事前認定」で異議申立てを行う場合は、任意保険会社に対して異議申立書を提出します。「事前認定」は相手の保険会社に一括して、手続きを行ってもらう方法で、「事前認定」により相手保険会社に一括して依頼した場合、後遺障害等級認定に必要な資料が少ない、交通事故との因果関係が立証できない、という状態のまま、正当な後遺障害等級認定を受けられない、実際の症状よりも低い等級となってしまう可能性があります。

異議申立ては何度でも行うことができますが、新たな医学的証拠(診断書、医療照会に対する回答書、医師の意見書等)を添付して申立をしないとほとんど変更されることはありません。
※交通事故により受傷し、継続的な治療を必要とする場合、相手方の任意保険会社が自賠責分も立て替えて支払う〔一括払い〕がされているケースが多いです。一定期間治療をしたけれども、後遺症が残ってしまった場合、一括払いをしている任意保険会社が一括払いの流れのまま後遺障害等級の認定手続きも行なってくれます。

2.自賠責紛争処理機構への申請

自賠責保険・共済紛争処理機構への申請は、公正中立で専門的な知見を有する第三者である弁護士、医師などで構成する紛争処理委員会が審査し審査結果(調停結果)を出す手続です。
被害者から提出された資料、保険会社からの説明、提出資料、機構が独自に収集した資料に基づく書面審査を行います。異議申立てが認められなかった場合に、申請を行うのが原則となります。異議申立手続と異なり、1回しか申請は認められませんが、被害者の方に、不利な変更はされません。

3.裁判(訴訟)

異議申立て等をしても納得する認定結果が得られない場合には、裁判所が紛争を強制的に解決する最終手段です。訴訟を通じて等級を争うことも考えられます。裁判所は、自賠責の後遺障害の認定結果に拘束されず、自ら後遺障害について判断を下すことができます。裁判所は後遺障害等級の立証資料として後遺障害等級認定票などの提出を求めるため、裁判でも同様の認定をすることが多くなります。また、訴訟では、個別・具体的な紛争処理を行い、被害者に有利な判断がされることもあれば、不利な判断をされることもあります。交通事故を得意とする弁護士が主張立証をすることによって、非該当の時よりも上位の等級が認定されるケースがあります。

 

異議申し立てに必要な提出書類

(自賠責保険会社に対して)
基本的には、異議申立ては書面により行います。「異議申立書」の用紙は保険会社で入手することができますので、それに異議申し立ての趣旨等を記入し、追加の添付資料がある場合は、保険会社に提出します。

初回の後遺障害等級認定に添付された理由が詳細でない場合、理由開示を求めて、詳細な理由の開示を受けます。 異議申し立ての趣旨欄には、何が不服で異議申し立てをするのかを書き、例えば前回の認定理由中に自分の症状が、正しく評価されていない部分がある場合などは、それを指摘します。提出資料が不足していたために認定されなかったと考えられる場合は、新たな資料を提出し、再度検討してほしい旨を記載します。大事なことは、、医学的証拠をもと、後遺障害の存在・程度や事故と後遺障害の因果関係を主張することが最も重要なことです。

(自賠責紛争処理機構に対して)
紛争処理申請書に、紛争の問題点、交渉の経過の概要及び請求の内容を記載し、紛争処理機構への申請も自賠責の不服の申立てと同様なので、申請書の基本的な内容は異議申立書と同内容です。

 

異議申立ての時効

症状固定日が起算日です。自賠責保険の被害者請求に関しては、傷害、死亡の損害賠償請求権は、原則として事故時から5年、後遺障害による損害賠償請求権は、症状固定時から3年で時効になります。(2010年4月1日以前に発生の事故について、保険金等の請求権の時効は2年になります。)
自賠責保険の損害賠償請求権については、保険会社に対して「時効中断承認申請書 (用紙は保険会社にあります)」を提出して、承認して認してもらうことにより簡単に中断できますし、後遺症認定が必要な場合は、自賠責保険請求権が時効消滅する前に保険会社に損害賠償請求をすることが必要です。

適正な等級認定がされるべき交通事故は、適正な等級認定をもらい、それに見合った賠償金を獲得しましょう。