交通事故でヘルニアを発症してしまったら

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交通事故による外傷の中で、頚部(首)の損傷は、最も多く、追突事故で大きな衝撃を受けたりした場合、その衝撃で「ヘルニア」を発症することがあります。

ヘルニアについては、椎間板が変形して神経を圧迫し、首の痛みや腰痛、あるいは手の痺れ、脚の痺れなどを引き起こす傷病です。交通事故で生じやすいものとして「頸椎椎間板ヘルニア」「腰椎椎間板ヘルニア」があります。

椎間板ヘルニアとは、追突事故などによるむち打ちにおいて、相当の衝撃を首や腰に受けた場合、背骨の腰部の椎骨と椎骨の間でクッションの役割を果たしている軟骨(椎間板)が変形し、組織の一部が飛び出すことをいいます。飛び出した椎間板の一部が付近にある神経を圧迫し、腰や足に激しい痛みやしびれなどの症状を起こします。

頸椎椎間板ヘルニアの原因

頚部(首)に力が加わり、頚部(首)の椎間板が変形(筋肉靭帯の損傷)し、神経を圧迫することによって生じ、例えば、追突事故により首が前後に大きく揺れ、むち打ち動作によって首に力が加わり、ヘルニアを発症することがあります。

頚椎単純X線の側面像

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椎間板が圧迫されているレントゲン・MRI

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腰部脊椎が前方から強く圧迫されています。椎間板が狭くなっていることもレントゲンより鮮明にわかります

 

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ヘルニアの症状

頚部(首)、肩、背中の痛み、腕や手指に痛みや痺れ、通常は、片方の神経根のみが圧迫されるので、腕や手などの痺れや痛みは、右と左の両方に生じるわけではなく、片方のみに生じる特徴があります。

 

治療方法

神経根症状の場合は、主に保存治療が行われます。頚部(首)の牽引、頸椎カラーなどによる頚部の安静と、消炎鎮痛薬やステロイド薬などの薬物治療が基本です。

疼痛コントロールが困難な場合は、硬膜外ブロック・星状神経節ブロック・神経根ブロックなどの各種神経ブロック療法が行われます。保存治療で改善が得られなかったり、運動麻痺が進行する場合は手術療法を検討することになります。

 

腰椎椎間板ヘルニアの原因

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腰部に力が加わり腰部の椎間板が変形して神経を圧迫することによって生じ、例えば、自転車、バイクに乗車中、自動車等に衝突されて転倒した場合、腰をひねったりすることがあります。

ひねることにより腰に力が加わり、ヘルニアを発症することがあります。

 

腰椎椎間板ヘルニアの症状

腰部に痛み、大腿から下腿や足指に痛みや痺れが生じ、ほとんどは片側性です。

 

治療方法

進行性の麻痺症状がある場合を除き、自然治癒することもあるため、まずは、保存療法を行い、保存療法として、まずは急性期のベッド上安静からコルセットによる安静があります。

薬物療法としては、消炎鎮痛薬や筋緊張弛緩薬などが疼痛軽減に有効です。

さらに疼痛が激しい場合は、硬膜外ブロックや神経根ブロックなどのブロック療法があり、ほとんどの場合、3カ月以内の保存療法で軽快します。

痛みが落ち着いた後、筋肉の強化をするための体操や、専用の器具で身体を牽引する理学療法が行われます。運動麻痺が進行する場合や排尿・排便障害が出現した場合、また保存療法で疼痛が軽快しない場合などは手術療法が選択されますが、手術に至るのは10~30%程度です。

 

ヘルニアの後遺障害認定

へリニアという病名がつけば後遺障害に認定されると思われている方も多いと思いますが、ヘルニアという病名自体は、重要なことではなく、先程もご説明しましたが、ヘルニアは椎間板が出ているだけであり、姿勢の悪い方、首や腰に負担のかかる仕事をされている方は、自覚症状がなくても、ヘルニアの状態になっている場合があります。

重要なことは、そのヘルニアがどの神経を圧迫、どのような症状が出ているかどうかであり、よほど明らかな神経の圧迫が画像上確認できる場合の他は、詳しい神経学的検査を行わないとわからないのが現状です。

詳しい神経学的検査を受けることなく後遺障害申請をしたとしても、事故との因果関係を追及され、後遺障害認定が非該当になってしまったり、本来の等級より低く認定されたりする可能性があります。

ヘルニアの後遺障害は、画像所見があるものは、12級?画像所見がなく、神経学的異常所見が得られたものは14級?なのか?このように単純な基準ではありません。ヘルニアが画像で発見されたとしても後遺障害認定はされません。

神経の圧迫がなければ病気とは言えないからです。圧迫の度合いが激しければ不完全麻痺、または、完全麻痺となることもあります。きちんと検査をしていないため見落としているケースも稀ではなく、後遺障害の等級認定を受けるためには、医学的な立証、説明可能なことが必要になります。

 

頸椎椎間板ヘルニア

後遺障害等級認定のためには医学的な立証、または説明可能なことが必要になります。

頸椎椎間板ヘルニアによるものと思われる、頚部(首)に痛みや腕や手指の痺れが後遺障害として残ることがあり、痛みや痺れの原因がヘルニアによる神経根の圧迫であることがMRIの他、以下のような神経学的テストをおこないます。

腰椎椎間板ヘルニア

腰部の痛みや脚や足指の痺れが後遺障害として残ることがあり、痛みや痺れの原因がヘルニアによる神経根の圧迫であることがMRIの他、以下のような神経学的検査をおこないます。

〈神経学的検査の種類〉
・間接可動域検査
・従手筋力検査(MMT)
・筋委縮検査
・腱反射・病的反射テスト
ホフマン・トレムナー反射
ワンテンベルグ徴候
足、膝プローヌス
・神経根症状誘発テスト
ジャクソン(Jackson)テスト
スパーリング(Spurling)テスト
FNSTテスト
・知覚検査
・電気生理学検査

 

椎間板ヘルニアで第12級を獲得するためのポイント

椎間板ヘルニアで第12級を獲得するには、椎間板ヘルニア自体の程度が、それなりのものであることが必要になります。

まずは、MRI写真で異常が確認されることが重要であり、強力な証拠になり、事故でMRIを撮るとヘルニアと診断せれることありますが、しかし、MRIでヘルニアになっていることが確認されていても、それは必ずしも、事故のせいで椎間板がはみだしたということではなく、もともとあったヘルニアがあった被害者の方が、事故の前まで無症状であったことも多くあります。

異常が出ているとは断言するはできず、そこで、神経学的検査で、MRIで異常が確認されているいる部分の神経根に対応する領域に、異常が確認される必要があります。

そのヘルニアが神経を圧迫していることを、MRI画像の確認(明らかな変形所見)・神経学的検査を証明することが重要なポイントになります。神経学的所見や自覚症状との整合性を取っておく必要があり、12級よ要件を満たしていることになります。詳しい神経学的検査を受けることなく後遺障害申請をしても、後遺障害認定は非該当になったり、本来の等級より低い認定とされたりします。

交通事故で後遺障害等級を得るには、被害者に立証責任があります。後遺障害等級申請の際は、適切な等級認定がされるためには、適切な治療と検査を受けることが重要ですし、治療以外の立証にも力を注ぎ証明する必要もあります。