交通事故発生から示談までの流れ
今日の車社会では、誰がいつ交通事故の被害者になっても不思議ではありません。
交通事故にあったとき、起こされた側(被害者)起こした側(加害者)がしなければならないことはいろいろあります。
突然の事故に驚かれると思いますが、落ち着いて、周りの状況をよく頭に入れておきましょう。
何よりもまず、冷静な対応が必要で、事故発生時、事実関係をはっきりさせておかなければならず、加害者・被害者共に、事故発生の日から60日以内に保険会社に対し、ただちに事故の発生を知らせなくてはいけません。
後遺障害の等級認定は非常に厳しく、申立てを行っても「非該当」、すなわち後遺障害ではないと判定されることも多く、後遺障害と認定されたとしても被害者が感じていたよりも低い等級で認定されることもあります。
この場合には、被害者の身体的な障害をさらに詳細に明記した追加診断書や後遺障害の状況を明らかにした写真等のいろいろな検査資料を添えて、保険会社を通じて異議の申立てをすることができます。
最終的に調査事務所から後遺障害の認定が得られない場合であっても、裁判による場合には、裁判所が後遺障害の認定をして、その分の損害賠償を認めてくれることもあります。
目次
事故発生から示談までの流れ
事故現場でしなければならない3つのこと
事故現場の確認(保全)
交通事故の場合、どちらがどの程度悪かったかという点が必ず問題になりますので、事故現場の状況は、警察が来るまでできるだけそのままにしておきましょう。
危険防止のため移動するときでも、必ず事故の状況をお互いによく確かめておきます。
加害車両の確認を必ずしましょう
加害者の住所や氏名、その後の連絡がスムーズできるように、自宅・勤務先も確認をしておきましょう。
運転免許証・身分証明書・車検証を確認し嘘や偽りがないかを確認してください。
加害車両の車検証、自賠責保険証、自動車保険証書(任意保険証)を見せてもらい、加害車両の所有者、自動車保険の内容や契約している保険会社を確認しておきましょう。
万が一、加害者が損害賠償に応じない場合、被害者が直接、加害者の加入する保険会社から、支払いを受けることもできます。
かならず警察への連絡をしましょう
道路交通法上の緊急措置義務や事故報告は、加害者だけではなく被害者にも課されています。
届出は法律上の義務であり、保険金の支払いを受けるための条件でもありますので、必ず警察に届け出るようにしましょう。
軽い事故の場合、加害者に頼まれたり、被害者側も面倒になり警察に届けないケースもよくありますが、後になって、損害賠償請求がこじれた時、被害者側が交通事故の起こったこと、自分が一方的な被害者であることを主張しても、それを証明することが難しくなります。
事故の届出を警察にしておけば、後になって保険金の請求には、各都府県警察の中の一機関である「自動車運転免許センター」の発行する「交通事故証明書」が必要となります。
※緊急措置義務とは・事故現場で被害者を救護し、被害の拡大を防がなければなりません。
事故発生の日から60日以内に事故通知を必ずしましょう
加害者および被害者はそれぞれ自分が加入している保険会社に対し、ただちに事故の発生を知らせなくてはいけません。
任意保険における保険会社の約款によれば、対人事故について、事故発生の日から60日以内に事故通知がない場合、保険会社は原則として事故による損害をてん補しない(保険会社が保険金を支払わない)とされていますので、ご注意下さい。
検査および治療を必ず受ける
仕事が忙しくても、必要な検査および治療は必ず受けましょう。
むち打ち損傷の場合など整骨院・接骨院・整形外科にかかりましょう。
治療内容等は、後遺症の認定や慰謝料計算の基礎となる重要な指数になり、忙しい等の理由で治療を受けないと治療の必要がなかったとみなされます。
むち打ち損傷などで身体の損傷が明らかでない場合、特に注意が必要です。
その際は、誰が病院の治療費や入院費用などの支払いをするかは、さまざまなケースがあります。
加害者は保険金で支払おうとするし、その保険金の支払いには時間がかかるからです。
現実には、とりあえず被害者側で支払うというケースが多いと思われ、被害者本人が病院の支払った領収書を受け取り、後で加害者側の保険会社に請求し、保険金で支払われるのが通例です。
症状固定と後遺障害
事故で負ったけがのうち、症状固定後に残った症状は、等級認定を受けることにより、後遺障害として、傷害部分とは別に侵害賠償の対象になります。
症状固定とは?
医学的な意味の「症状固定」
治療の結果、すっかり元どおりまで回復(完治)するのが一番ですが、治療を続けても大幅な改善が見込めず、どうしても症状が残ってしまう場合があります。
症状の回復が見込めない状態を医学的な意味の「症状固定」といいます。そうした判断をするのは、基本的に治療をしている医師ですが、だいたいの目安は6ヶ月が目安と言われています。
損害賠償上の「症状固定」
医学的に大幅な改善が見込めないのであれば、いつまでも治療費を加害者側に負担負担させるのではなく、治療期間は終了し残った症状については「後遺障害」として損害賠償の対象として問題を早期解決する、損害賠償上の都合によるしくみです。
※後遺障害とは、交通事故によって受傷した精神的・肉体的な傷害が、将来においても回復の見込めない状態となり、交通事故とその症状固定状態との間に相当因果関係が認められ、その存在が医学的にみと認められる(証明・説明できる)もので、労働能力の喪失(低下)を伴うもので、その怪我の症状が自賠責保険の等級認定に該当するもの
損害賠償の実務上、症状固定を境に〔傷害部分〕と〔後遺障害部分〕に分けて、下図のようにそれぞれ別々の損害として請求することになります。
後遺障害部分とは?
自賠責保険においては、等級が認定された「後遺障害」のみが賠償の対象となり、いくら症状が残っても、等級認定されない限り、賠償の対象とはなりません(自賠責上の後遺障害等級認定が非該当でも、裁判で後遺障害としての賠償が認められた判例あり)。後遺症が残っている場合、適正な賠償を受けるには適正な後遺障害等級認定が前提となります、費目は次の通りです。
逸失利益 | 後遺障害を負ったことにより、労働能力が低下し、将来に渡って失う利益のことです。 |
後遺障害慰謝料 | 後遺障害を負うことによる肉体的・精神的負担に対する慰謝料です。 等級認定されば、入通院慰謝料とは別に請求できます。 |
その他 | 将来実施することが確実な治療の費用は医師が必要性を認めていれば請求できます。 また、生活にかかる費用として、付添看護費、家屋等改造費、義肢等の装具費用等が請求できます。 |
後遺障害申請提出場所はどこになる?
後遺障害認定は保険会社とは別組織で交通事故によるけがを治療しても、ある時期に達しますとそれ以上改善が見込めない状態になることがあります。
医師はこの状態になりますと診断書に、「平成○○年○月○日をもって『治癒』もしくは『症状固定』」と記入します。この状態で被害者の身体に一定の障害が残った場合、これが
果たして後遺障害として判定されるか否かにより、被害者の請求できる損害賠償の範囲が違ってきます。
後遺障害にあたるのではないかと思った場合には、主治医に「自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書」または「自動車損害賠償責任保険歯科後遺障害診断書」に「各部位の後遺障害の内容」等の所定事項を記入してもらい、保険会社を通じて、各地区の調査事務所に後遺障害の認定の申立てをします。
調査事務所は、保険会社とは別組織の損害保険料率算出機構(自賠責損害調査事務所)という機関が設置している事務所です。
後遺障害の認定では、被害者との面談は原則実施されず、書類審査で行われますので、診断書の内容が簡単すぎたり、必要な検査資料などが欠けている場合、後遺症に見合った認定はされません。後遺障害診断書はとても重要で、認定された等級により損害賠償額は大きく異なります。
妥当な損害賠償を受けるためには、妥当な等級認定を受けていることが大前提になります。
等級認定に対して異議の申立てが可能です
後遺障害の等級認定は非常に厳しく、申立てを行っても「非該当」、すなわち後遺障害ではないと判定されることも多く、後遺障害と認定されたとしても被害者が感じていたよりも低い等級で認定されることもあります。
この場合には、被害者の身体的な障害をさらに詳細に明記した追加診断書や後遺障害の状況を明らかにした写真等のいろいろな検査資料を添えて、保険会社を通じて異議の申立てをすることができます。
最終的に調査事務所から後遺障害の認定が得られない場合であっても、裁判による場合には、裁判所が後遺障害の認定をして、その分の損害賠償を認めてくれることもあります。
損害賠償請求をするか、示談をするか
後遺障害の有無が確定すると、保険会社から損害賠償額の提示がありますので、それで示談をしたほうがよいか、交渉をしたほうがよいのか、対応を考える必要があります。
時間、費用、精神的負担と、交渉により増額する見込み金額を比較して検討しましょう。
★※詳しくは損害賠償の基本的な考え方でご説明いたします。
示談とは、民法上の紛争を当事者(被害者と加害者)双方が話し合いによって解決することです。
示談の内容は、損害賠償の金額、支払い時期などで、成立すれば示談書を作成します、示談成立後、当事者は合意内容に拘束され、原則として変更できません。
★※詳しくは示談交渉の進め方でご説明いたします。