交通事故で起きる高次脳機能障害とは?

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高次脳機能障害(こうじのうきのうしょうがい)というフレーズを耳に事はありますか。

交通事故によって、主に脳に損傷が生じ、後遺障害として高次脳機能障害が残ってしまう場合があります。他の後遺症がと比べて、その症状が後遺症に該当することに気づきにくいため、周囲の理解も得られにくく、被害者の方は日常の生活や仕事においても様々な面で支障をきたすこととなります。交通事故の後遺障害として認定されてから、日も浅く、専門家の研究が始まって日も浅く、専門家されわからないこともあるといわれ、医学的、法律的にも認定が難しいとという特徴があり、見えにくい後遺障害であるため、事故直後から認定に向けた準備をする必要があります。
・高次脳機能障害について
・高次脳機能障害の後遺障害等級認定に必要は条件などをご説明しましょう。

 

高次脳機能障害とは

交通事故などによって脳に損傷を負ってしまったことで引き起こされる神経障害(記憶障害・注意障害・遂行機能障害・社会的行動障害)および人格変化などを生じる場合をいいます。

高次脳機能障害が残ってしまっても、外見的には事故によるけがは治癒しているかのように見えるため、後遺障害が残ってしまったことに対する理解が得られにくく、対人関係に問題があったり、生活への適応が難しくなって、社会に復帰するのが困難であるという特徴があります。

 

高次脳機能障害の主要な症状

交通事故の後、次のような症状があり、それが原因となって、対人関係に問題があったり、生活への適応が難しくたっている場合、高次脳機能障害が疑われます。

また、下記のの症状がある場合でも、交通事故によるものかの判断はむずかしく、後遺障害として認められないことも少なくありません。

記憶障害

記憶障害とは、事故や病気の前に経験したことが思いだせなくなり、新しい経験や情報を覚えられなくなった状態

・物をどこに置いたかわすれたり、新しい出来事が覚えられない
・何度も同じ事を繰り返し質問をする
・約束をわすれてしまう
・人の名前や作業の手順が覚えられない
・自分のしていたことをわすれてしまう

注意障害

注意障害とは、周囲からの刺激に対し、必要なものに意識を向けたり、重要なものに意識を集中させたりすることが、うまくできなくなった状態

・長時間、作業が続けることが出来ない
・気が散りやすい
・一度に二つ以上のことしようとすると混乱する
・周囲の状況を判断せず、行動を起こそうとする
・ぼんやりしていて、何かをするとミスばかりする

半空間無視

半側空間無視とは、脳の損傷の反対側に提示された刺激に反応したり、注意を向けたりするのに失敗することで、その失敗が感覚障害や運動障害の中でとても目を引く状態 通常の感覚で言うと、わざと気付かないようにしているとしか思えないほどに、その現れ方はとても印象的です。

・片側にあるものだけを見落とす
・車椅子操作において麻痺側のブレーキやフットレストの管理に無頓着で麻痺側の障害物にぶつかりやすいなど、行動を共にしていれば日常動作面での関わりから比較的に  わかりやすい症状

遂行機能障害

論理的に考え、計画し、問題を解決、推察、行動するといったことができず、また、自分のした行動を評価したり、分析したり出来ない状態

・指示がないと何もできない
・自分で計画を立てられない
・効率よく仕事ができない
・仕事が決まったとおりに仕上がらない
・自分で考えて行動できない

社会的行動障害

行動や感情を場面や状況にあわせて、コントロールすることが出来ない状態

・共感性の低下
・対人関係がうまくできない
・欲望のコントロールができない
・場違いな行動や発言をしてしまう
・子供っぽくなったり、すぐに人に頼るようになる(退行・依存性)

地誌的障害

道順がたどれなくなり、馴染んでいる空間(自宅から駅までなどの通いなれた道)で迷うという道順障害(地誌的見当式障害)、地図上で任意の位置を示したり、地理的位置関係を口頭で答えたり図示したりすることができなくなる地誌的障害(地誌的記憶障害)の2種類に分けられています。

・通いなれた道で迷子になってしまう
・道順が覚えられない

自己認識の低下

・上手くいかないのは相手のせいだと考える
・自分が障害を持ってることに対する認識がうまくできない
・必要な治療やリハビリを拒否する

失語症

・自分の話したいことを上手く言葉にできなかったり、滑らかに話すことができない
・文字を読んだり、書いたりすることが出来ない
・相手の話が理解できない

失認症

・人の顔が判別できない
・触っているものが何かわからない

その他

・運動失調、片麻痺

 

高次脳機能障害の症状が出る原因

脳の神経回路が傷ついて起こる障害
頭が強い衝撃(外傷性脳損傷)を受けると前頭葉や側頭葉が損傷され、脳全体にひずみが生じることによって損傷が生じることによるものと考えられます。

そのために、記憶障害や性格のの変化などの社会的行動障害が表れやすくなります。

交通事故が最も多い原因となると考えられ、損傷が広範囲にわたることが多いため、高次脳機能障害の症状も組み合わさって出ることが多いと考えられています。
交通事故以外では、脳血管障害(脳梗塞、くも膜下出血等)、脳腫瘍、低酸素脳症、ウイルス性脳炎、アルコール中毒、薬物依存があります。

脳血管障害、脳外傷脳が原因となる高次脳機能障害は全体の原因の9割と考えられています。しかし、救命の技術の向上により、脳出血や、交通事故の被害者の命に関わる事は、非常に少なくなりましたが、脳への大きな衝撃は交通事故の後遺症として、脳の働きの一部を損傷してしまうこととなります。

 

高次脳機能障害の回復のための治療方法

高次脳機能障害は、手術治療や内服治療、点滴治療といった確立した治療方法がありません。一度高次脳機能が低下したとしても、徐々に改善することは可能ですので、受傷後1年間は、社会復帰を目指してリハビリテーションを行うことが中心になります。

高次機能障害は、一見しただけではわかりにくい事が多く、周囲の理解が得られにくい障害の一つですが、記憶障害や集中力が保てない、判断力が低下したり、系統だった思考ができずに仕事に支障がでる、やる気が出ないといった症状は、社会生活を営む上で大きな障害となります。

一度低下してしまった高次脳機能機能は徐々に改善します。多くの場合、受傷・発症後1年程度の時期までは著しい改善が認められます。その後は改善のスピードが鈍り、受傷・発症後2年程度経過するとほぼ症状が固定してしまうと言われています。しかし、高次脳機能の回復が困難になっても適切なリハビリテーションを行いその他の手段で生活を営む方法を獲得することができれば、より早く社会への復帰ができます。

 

高次脳機能障害の方への対応

高次脳機能障害の症状としては、脳の損傷した箇所によって、人により様々に、重症度も違います。また、その場の環境や対応する相手によって、現れ方に違いがあります。しかし、環境を整えたり、対応の仕方を工夫するなど、適切な対応を行えば、それまでうまく出来なかったことが出来るようになったり、問題行動が減ったりすることがあります。根気のいる作業ですが諦めず忍耐力をもって接する事が大切なことです。

1、まず、家族・周囲の人が、高次脳機能障害を理解することからはじまります
以前と人が変わってしまった、今まで出来ていたことができなくなってしまったなど、様々な変化を理解することからはじまります、行動や反応を観察し、その方への適切な対応を探ることが必要です。

2、忍耐力をもって接すること
一度にすることを少なくして、何度も同じことを繰り返しすることにより、できることが一つづつ増えていきます。
適切な対処法を繰り返し行い、忍耐力をもって接することが大切なことです、すぐに結果を求めることがないようにしましょう。

3、生活環境を整えること

周囲の情報を受けることが苦手になるため、家族等が支援方法を統一することが重要になります。

4、代償手段を身につけること
脳の失われた機能を他の方法で置き換えることで解決できることもあります。

 

高次脳機能障害の方への社会保障制度

高次脳機能障害と診断された場合には、下記の制度が利用できる場合があります。

(1)精神障害者保健福祉手帳
一定程度の精神障害の状態にあることを認定するものです。手帳の交付を受けることで自立と社会参加の促進を図るための、社会保障であり、高次脳機能障害の原因となった病気や怪我で、初めて受診した日から6ヶ月後に申請することができます。

(2)自立支援医療(精神通院医療)
精神疾患(てんかんも含む)で通院されている方への医療費助成制度になります、高次脳機能障害のための通院・リハビリが対象となり自己負担の軽減するものです。

(3)障害福祉サービス
障害者自立支援法により障害の種別にかかわらず、共通のしくみの中で福祉サービスが受けることができ、高次脳機能障害の方は手帳または診断書にて申請することができます。

(4)障害年金
年金に加入している人が病気やけがで障害者になった時、障害年金が支給されることがあり、高次脳機能障害の原因となった病気や怪我で、初めて受診した日(障害認定日から1年6ヶ月後に申請することができます。

(5)重度心身障害者医療費助成制度
重度障害者の方とその家族の経済的な負担を軽減するための助成制度です、高次脳機能障害の方は通院医療(高次脳機能障害以外の通院も含めて)が対象となります。

 

高次脳機能障害の後遺障害認定を受ける方法

事故により高次脳機能障害となってしまった場合、目にみえる障害ではなく、内面的なものであることが多く、検査をしても異常があると認められにくく、後遺症と認定されず、適正な損害賠償を、受けられない可能性もあります。

高次脳機能障害は、後遺障害等級認定の申請が通らなければ補償金を請求が出来ませんし、交通事故の高次脳機能障害が原因で仕事が出来なくなったという証明をしなければなりませんが、後遺障害等級認定は、すべて書類審査です。

書類に書いていないことは、傷病、傷害にはなりません、高次脳機能障害の等級認定の判断が、高度の専門的な知識や経験を必要とするため、より慎重に判断するための仕組みを作ったものと考えられ、このような仕組みの存在からも、高次脳機能障害の等級認定の判断がいかに困難なものかということがわかります。

 

高次脳機能障害の4つのポイント

ポイント1:事故の際、脳に大きなダメージを生じた
ポイント2:事故後の意識障害
ポイント3:症状の存在に気がつくこと ※
ポイント4:後遺障害認定を受けるために必要な検査を受けること脳の画像(CTやMRIの画像)にダメージ痕がある、脳の画像診断をもとに、衝撃がどの程度加わったのかの証明

※事故当日の入院は必須の条件になり、入院中、退院後すぐの受傷後間もない時期に、高次脳機能障害が見られた場合、病院の医師に伝え、高次脳機能障害によるものかを確認してもらうことが大切になり、後遺障害を判断する際には、この時点の医師確認がされているかが重要なポイントになります。
必ず専門医の受診をしてください。

高次脳機能障害の症状はさまざまであり、日常生活の中で現れますから、その症状を医師や認定機関に正確に伝えなければ、適切な診断書や等級認定の判断を得ることは難しくなります。

 

高次脳機能障害になってしまった場合の慰謝料

 

別表1後遺障害の慰謝料についての自賠責・弁護士会の各基準(介護を要する)

第1級第2級
慰謝料1,600万円1,163万円

別表2 自動車損害賠償保障法施行令に該当する場合

等級自賠責基準東京弁護士会基準
(赤い本)
1級1100万円2,800万円
2級958万円2,370万円
3級829万円1,990万円
4級712万円1,670万円
5級599万円1,400万円
6級498万円1,180万円
7級409万円1,000万円
8級324万円830万円
9級245万円690万円
10級187万円550万円
11級135万円420万円
12級93万円290万円
13級57万円180万円
14級32万円110万円

自動車損害賠償補償~
第1級 常時全面的介護が必要
第2級 随時介護が必要、仕事に就くことができない
第3級 介護なしでも日常動作が行える、終身労務に服することができない
第5級 単純な反復作業であれば、仕事に就くことができる
第7級 作業の手順が悪く、一般人と同等の作業はできない
第9級 作業効率や作業持続力に問題がある

交通事故により負ったけがは、治ったとしても一生後遺障害となってしまうことがあります。
脳の障害である高次脳機能障害は行動にあらわれる障害です。対人関係、仕事にも多大なる影響が出ることもありますが、しかし、高次脳機能障害はリハビリによって症状は必ず改善します。
機能が回復することはありませんが、できる事を伸ばすことで必ずよくなる事でしょう。そして、リハビリによって症状の回復を図ることと同じくらい、適切な認定、適切な賠償金を受け取ることが必要かと思われます。