部位別後遺障害 脊柱及びその他体幹骨の後遺障害
脊柱・その他体幹骨の後遺障害
脊柱とは、いわゆる背骨を中心とした、首からお尻に至るまでの一連の骨格を言います。
首の部分にある頚椎から、胸椎、腰椎、仙椎、尾椎を呼ばれる椎骨が上から順番になっていて、その椎骨の中にある椎孔という穴の中に、脊髄が入っています。それぞれの椎骨は椎間板と上下椎間関節と呼ばれるもので接続されていて、それによって背筋を曲げることが出来るようになっています。
少しややこしく、誤解しやすいところなのですが、後遺障害として取り扱う場合、脊柱の後遺障害と呼ばれるものは、首から体幹にかけての支える機能、動かす機能などを問題にしているので、仙骨は下記のその他体幹骨の障害として考える事になっています。
脊柱の中でも、頭部を支える機能を持つ頚椎の部分と体幹を支える機能を持つ胸腰椎の部分は別の部位と考え、後遺障害の等級はそれぞれで認定することになっています。
脊椎を構成する骨一つずつを椎骨と呼び、その円柱状になっている部分を椎体と言います。脊柱の後遺障害においては、この椎体の状態が問題になることが多いので、図で確認してください。
その他体幹骨と呼んでいるのは、鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨、骨盤骨(ここに仙骨も含めます)の事です。
目次
脊柱と体幹骨の後遺障害等級表
後遺障害の種類 | 等級 | 障害の程度 | ||
---|---|---|---|---|
脊柱 | 変形障害 | 第6級 | 脊柱に著しい変形を残すもの | |
第11級 | 脊柱に変形を残すもの | |||
運動障害 | 第6級 | 脊柱に著しい運動障害を残すもの | ||
第8級 | 脊柱に運動障害を残すもの | |||
その他の体感骨 | 第12級 | 鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨、骨盤骨に著しい変形を残すもの |
脊柱と体幹骨の後遺障害の種類
各後遺障害についての説明・解説です。脊柱に関しては変形障害、運動障害、荷重障害があり、その他体幹骨には変形障害があります。
脊柱の変形障害
脊柱の変形障害は、3段階に分けて認定されることになっています。第6級の著しい変形、第8級に準じるとされる中程度の変形は、脊柱の後彎、側彎の程度によって等級が認定されます。後彎というのは、背中が丸まり、いわゆる猫背になる方向で脊柱が曲がってしまうこと、側彎というのはそれが左右方向に発生してしまう事です。
後彎は、脊椎圧迫骨折や脱臼等により、脊柱を構成している椎体(※図を参照)の身体の正面側の厚さを、身体の背中側の厚さと比較して判断します。側彎は、コブ法と言われる方法で側彎度という数値を出して判定します。
最も等級の認定としては軽度となります、第11級の変形は、エックス線写真、CT画像、MRI画像などによって脊椎圧迫骨折が確認できるもの、脊椎固定手術をしたもの等です。
変形障害の等級は以下の3つの認定がありますが、どれも、X線写真やCT、MRI画像などで脊椎圧迫骨折などの異常が確認できる必要があります。
脊柱の運動障害
第6級 脊柱を動かす機能に大きな障害が残った場合
第8級 脊柱を動かす機能に障害が残った場合
脊椎圧迫骨折、脊椎固定術、項背腰部軟部組織の物理的な変質がなく、単純に痛みによって動かす機能の障害が残った場合、局部の神経症状の後遺障害、として認定しますので、脊椎の運動障害としては取り扱いません。
第6級は、
①頚椎、胸腰椎の両方に脊椎圧迫骨折があり、それがX線写真などによって確認出来る場合
②頚椎、胸腰椎の両方に脊椎固定術が行われた場合
③項杯腰部軟部組織に解剖学的に明らかな変化が認められた場合
これら①~③のどれかに当てはまり、頚部と胸腰部が固まって動かせなくなった場合に認定されます。
第8級は、
①頚椎、胸腰椎の片方に脊椎圧迫骨折があり、それがX線写真などによって確認出来る場合
②頚椎、胸腰椎の片方に脊椎固定術が行われた場合
③項杯腰部軟部組織に解剖学的に明らかな変化が認められた場合
これら①~③のどれかに当てはまり、頚部か胸腰部どちらかが通常基準とされる角度の半分しか動かせなくなった場合、もしくは頭蓋骨と頚椎の上部の間の可動性に問題が生じた場合に認定されます。
脊柱の荷重障害
荷重障害というのは、脊柱が体を支えることができなくなる後遺障害の事です。荷重機能の障害が認められるのは、原因が明らかであり、首の部分と腰の部分両方を支えるのが困難、常に硬性補装具を必要とする場合は第6級、首の部分か腰の部分のどちらかでも支えるのが困難、常に硬性補装具を必要とするなら第8級に準じる運動障害として取扱います。
その他体幹骨の変形障害
第12級 鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨、骨盤骨に外からみて分かるほどの欠損や変形があった場合
鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨、骨盤骨において裸になった時に、変形や欠損が明らかにわかる程度の状態を言います。エックス線写真などによって初めて分かる程度であれば認定されません。
肋骨の欠損、変形は、本数や場所などに関係なく、肋骨全体で一つの部位、一つの障害として取り扱う事になっています。
金銭について
後遺障害慰謝料
目安ではありますが、自賠責保険金額の一覧を載せておきます。
等級 | 自賠責保険金額 | 後遺障害 |
---|---|---|
第6級 | 1,296万円 | 脊柱に大きな変形を残す場合 |
脊柱に大きな運動障害を残す場合 | ||
第8級 | 819万円 | 脊柱に運動障害を残す場合 |
第11級 | 331万円 | 脊柱に変形を残す場合 |
第12級 | 224万円 | 鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨又は骨盤骨に明らかな変形を残す場合 |
入通院慰謝料
弁護士基準と言われる金額で、こちらも目安と考えてください。少々細かい話ですが、この入通院慰謝料の計算にはおよそ3種類の計算方法があり、最も高額になるのが弁護士が交渉する場合に用いるこの金額です。保険会社が提示してくる金額は基本的にもっと少額です。
入院 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 13月 | 14月 | 15月 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
通院 | 53 | 101 | 145 | 184 | 217 | 244 | 266 | 284 | 297 | 306 | 314 | 321 | 328 | 334 | 340 | |
1月 | 28 | 77 | 122 | 162 | 199 | 228 | 252 | 274 | 291 | 303 | 311 | 318 | 325 | 332 | 336 | 342 |
2月 | 52 | 98 | 139 | 177 | 210 | 236 | 260 | 281 | 297 | 308 | 315 | 322 | 329 | 334 | 338 | 344 |
3月 | 73 | 115 | 154 | 188 | 218 | 244 | 267 | 287 | 302 | 312 | 319 | 326 | 331 | 336 | 340 | 346 |
4月 | 90 | 130 | 165 | 196 | 226 | 251 | 273 | 292 | 306 | 316 | 323 | 328 | 333 | 338 | 342 | 348 |
5月 | 105 | 141 | 173 | 204 | 233 | 257 | 278 | 296 | 310 | 320 | 325 | 330 | 335 | 340 | 344 | 350 |
6月 | 116 | 149 | 181 | 211 | 239 | 362 | 282 | 300 | 314 | 322 | 327 | 332 | 337 | 342 | 346 | |
7月 | 124 | 157 | 188 | 217 | 244 | 266 | 286 | 304 | 316 | 324 | 329 | 334 | 339 | 344 | ||
8月 | 132 | 164 | 194 | 222 | 248 | 270 | 290 | 306 | 318 | 326 | 331 | 336 | 341 | |||
9月 | 139 | 170 | 199 | 226 | 252 | 274 | 292 | 308 | 320 | 328 | 333 | 338 | ||||
10月 | 145 | 175 | 203 | 230 | 256 | 276 | 294 | 310 | 322 | 330 | 335 | |||||
11月 | 150 | 179 | 207 | 234 | 258 | 278 | 296 | 312 | 324 | 332 | ||||||
12月 | 154 | 183 | 211 | 236 | 260 | 280 | 298 | 314 | 326 | |||||||
13月 | 158 | 187 | 213 | 238 | 262 | 282 | 300 | 316 | ||||||||
14月 | 162 | 189 | 215 | 240 | 264 | 284 | 302 | |||||||||
15月 | 164 | 191 | 217 | 242 | 266 | 286 |
逸失利益
本来得られるはずだったのに損害によって得られなくなってしまった利益を逸失利益と言い、この場合は後遺障害が残った事によって将来得られるはずだったのに得られなくなってしまった利益を指します。
後遺障害が残った事によって今までと同じ仕事ができなくなり、より体への負担が小さい仕事に転職した、予定されていた昇進ができなくなった、等を計算して考慮します。
【事故前の基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に応じたライプニッツ係数】
労働可能期間は、原則として67歳までですが、職業によってもっと長期に渡って働く事が一般的な場合などは、より長い期間を主張することが可能な場合もあります。
基礎収入や労働能力喪失率も、あくまで基準となる数字です。職業、労働環境、怪我の程度や予後等などを含め、交通事故の被害というのは個々で違い、複雑な判断が求められる状況にあります。この場合はどうなるのか、基準以上に主張できるのではないか、そんな疑問があればお気軽にご相談ください。
年齢 | 就労可能年数 | ライプニッツ係数 |
---|---|---|
18才 | 49年 | 18.169 |
19才 | 48年 | 18.077 |
20才 | 47年 | 17.981 |
21才 | 46年 | 17.88 |
22才 | 45年 | 17.774 |
23才 | 44年 | 17.663 |
24才 | 43年 | 17.546 |
25才 | 42年 | 17.423 |
26才 | 41年 | 17.294 |
27才 | 40年 | 17.159 |
28才 | 39年 | 17.017 |
29才 | 38年 | 16.868 |
30才 | 37年 | 16.711 |
31才 | 36年 | 16.547 |
32才 | 35年 | 16.374 |
33才 | 34年 | 16.193 |
34才 | 33年 | 16.003 |
35才 | 32年 | 15.803 |
36才 | 31年 | 15.593 |
37才 | 30年 | 15.372 |
38才 | 29年 | 15.141 |
39才 | 28年 | 14.898 |
40才 | 27年 | 14.643 |
41才 | 26年 | 14.375 |
42才 | 25年 | 14.094 |
43才 | 24年 | 13.799 |
44才 | 23年 | 13.489 |
45才 | 22年 | 13.163 |
46才 | 21年 | 12.821 |
47才 | 20年 | 12.462 |
48才 | 19年 | 12.085 |
49才 | 18年 | 11.69 |
50才 | 17年 | 11.274 |
51才 | 16年 | 10.838 |
52才 | 15年 | 10.38 |
53才 | 14年 | 9.899 |
54才 | 13年 | 9.394 |
55才 | 12年 | 8.863 |
56才 | 12年 | 8.863 |
57才 | 11年 | 8.306 |
58才 | 11年 | 8.306 |
59才 | 11年 | 8.306 |
60才 | 10年 | 7.722 |
61才 | 10年 | 7.722 |
62才 | 9年 | 7.108 |
63才 | 9年 | 7.108 |
64才 | 9年 | 7.108 |
65才 | 8年 | 6.463 |
66才 | 8年 | 6.463 |
67才 | 8年 | 6.463 |
68才 | 7年 | 5.786 |
69才 | 7年 | 5.786 |
70才 | 6年 | 5.076 |
71才 | 6年 | 5.076 |
72才 | 6年 | 5.076 |
73才 | 6年 | 5.076 |
74才 | 5年 | 4.329 |
75才 | 5年 | 4.329 |
76才 | 5年 | 4.329 |
77才 | 4年 | 3.546 |
78才 | 4年 | 3.546 |
79才 | 4年 | 3.546 |
80才 | 4年 | 3.546 |
81才 | 4年 | 3.546 |
82才 | 3年 | 2.723 |
83才 | 3年 | 2.723 |
84才 | 3年 | 2.723 |
85才 | 3年 | 2.723 |
86才 | 3年 | 2.723 |
87才 | 3年 | 2.723 |
88才 | 2年 | 1.859 |
89才 | 2年 | 1.859 |
90才 | 2年 | 1.859 |
91才 | 2年 | 1.859 |
92才 | 2年 | 1.859 |
93才 | 2年 | 1.859 |
94才 | 2年 | 1.859 |
95才 | 2年 | 1.859 |
96才 | 2年 | 1.859 |
97才~ | 1年 | 0.952 |
ご相談について
交通事故は、一見似たような事件にみえても、後遺障害を含めた怪我の治りや、休業損害を考えた時の仕事の状況、そのあとの影響などを丁寧にみていくと非常に複雑です。
怪我の部位と程度、職業上での支障など、経験のある弁護士であればこそ的確に判断して主張出来る事も多くあります。コレクト法律事務所は、ご相談は無料となっております。依頼するかどうか迷っている、そんな方こそ、まずはご相談ださい。