後遺障害等級:第1級(1号~6号)認定の基準

後遺障害等級 第1級

交通事故による後遺障害等級で、最も重い後遺障害とされるのが第1級です。要介護でなくても重篤な症状の残る後遺障害を指し、視力、手足の障害の6つに分類されており、足の切断が一般的に知られており、普通の社会生活を送るのは困難であり、完全に労働能力を失ったと判断され、労働能力喪失率は100%とみなされます。

損害保険料率算出機構が、出している自賠責保険の後遺障害等級別の件数構成比によりますと、後遺障害等級認定を受けた人の内、0.06%が1級の認定を受けています(平成25年度)。

後遺障害等級認定を受けることにより、自賠責保険の保障対象は、逸失利益と後遺障害慰謝料を損害賠償として請求することができます。

後遺障害等級1級の6つの認定条件とは

後遺障害第1級は、障害を負った部位によって1号から6号まで分類されています。

等級部位障害の程度
一級視力の障害両眼が失明したもの
口の障害咀嚼及び言語の機能を廃したもの
腕の障害両上肢をひじ関節以上で失ったもの
両上肢の用を全廃したもの
脚の障害両下肢をひざ関節以上で失ったもの
両下肢の用を全廃したもの

 

両眼が失明した場合

両目の視力を完全に失明した場合、または矯正視力で0.01以下になってしまった場合に該当し、コンタクトレンズ、眼鏡によって矯正した後の測定値とします。

後遺障害認定基準上の失明とは、眼球を摘出し明るさや暗さがわからない、また、ようやく明るさや暗さがわかる程度のことをいいます。失明には、光覚弁(明暗弁)や手動弁が含まれます。

※光覚弁とは、暗い部屋で被験者の眼前で照明を点滅させて、明るさや暗さが判別できる能力のことをいいます。
※手動弁とは、検者の手拳を被験者の眼前で上下左右に動かして、動きの方向を判断できる能力のことをいいます。

咀嚼ができなくなった、言語を発声する機能を失った

咀嚼とは、食べ物を噛んで飲み込む機能と、言葉を話す機能に障害が残った場合に認定されます。両方とも口や顎あるいは舌といった部位を使う機能ですので、咀嚼機能に障害が出れば言語機能にも影響が出てくるのはよくあることです。咀嚼機能と、言語機能の両方の機能に問題が残った場合に認定されます。

具体的には、流動食物(たとえば、味噌汁、スープ)以外は、食べることができない状態です。

言語の機能に障害を残すものとは、4つの子音のうち3つ以上が発音できなくなった状態が該当します。

4つの子音とは、具体的には次の通りです。
・口唇音/ま行音・ぱ行音・ば行音・わ行音、ふ
・歯舌音/な行音・た行音・ら行音・ざ行音・しゅ・じゅ・し
・口蓋音/か行音・が行音・や行音・ひ・にゅ・ぎゅ・ん
・咽頭音/は行音

咀嚼障害と言語障害の両方に障害がある場合認定されます。

 

手足の欠損や麻痺

それぞれ、細かく規定されているので、下の解説を御覧ください。
これらは手足を失ったり、麻痺して動かなくなった場合に認定されます。

両上肢をひじ関節以上で失ったものとは、
肩関節において、肩甲骨と上腕骨とを離断したもの、肩関節と肘関節との間において上腕を切断したもの、肘関節において、上腕骨と橈骨および尺骨とを離断した場合をいいます。

両上肢の用を全廃したものとは、
交通事故によって、上肢の用を全廃したものとは、両方の腕を切断した場合でけではなく、下記のような場合をいいます。

・3大関節(股関節、肘関節、手関節)のすべてが強直し、つまり関節がまったく可動しない状態
・健側の関節可動域の10%程度以下に制限された状態
・肩・肘・手関節の完全麻痺の状態
・手指の障害が加わった状態

両下肢をひざ関節以上で失ったものとは

・脚の付け根から下肢すべてを失った場合
・脚の付け根からひざまでの間のどこかで切断された場合
・およそひざ関節を切断し、ひざから先を失った場合

両下肢の用を全廃したものとは
交通事故によって、下肢の用を全廃したものとは、両方の足を切断した場合だけではなく、下記のような場合をいいます。

・3大関節(股関節、ひざ関節、足関節)のすべてが強直したものをいい、足指全部が強直した状態
・健側の関節可動域の10%程度以下に制限された状態
・足指の障害が加わった状態をいいます。

後遺障害等級1級の損害賠償額の計算例

55歳の会社員
事故前の年収650万円

後遺障害等級1級に該当したとして仮定した場合の後遺障害に関する損害額(弁護士会基準での計算)

後遺障害等級慰謝料・・・3000万円

逸失利益・・・ 7984万5600円
650万円(基礎収入)×1.0(労働能力喪失率)×9.3936(労働能力喪失期間13年間のライプニッツ係数)=7984万5600円

まとめ

後遺障害等級の第1級までは労働能力喪失率は100%と判断される重い障害が残り、日常生活は何とかできても、社会生活および就労はできない状態で、事故前の生活に戻ることはほぼ不可能です。金額が大きくなるので冷静な判断が難しくなる場合もありますが、将来的にかかるであろう金額についても、しっかり見通して計算・請求しなくては後で困る事にもなりかねません。
交通事故に詳しい弁護士に相談して、見落としがないか確認し、手続き・交渉に望まれることをお勧めします。