後遺障害等級:第13級(1号~11号)認定の基準

交通事故における後遺障害等級:第13級(1号~11号認定)とは?

交通事故の後遺障害等級13級は、眼、歯、手足指、内臓等の障害について11に分類されています。13級の労働能力喪失率は、9%と低く設定されており、程度としては軽いレベルと判断されています。自賠責保険の後遺障害等級別の件数構成比によりますと、後遺障害等級認定を受けた人の内、0.93%が13級の認定を受けています(平成25年度)

後遺障害等級認定を受けることにより、自賠責保険の保障対象は、逸失利益と後遺障害慰謝料を損害賠償として請求することができます。

 

後遺障害等級13級の11の認定条件とは

後遺障害第13級は、障害を負った部位によって1号から11号まで分類されています。

1号:眼の視力が0.6以下になったもの
2号:正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの
3号:1眼に半盲症、複視狭窄又は視野変状を残すもの
4号:両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
5号:5歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
6号:1手のこ指の用を廃したもの
7号:1手のおや指の指骨の一部を失ったもの
8号:1下肢を1センチメートル以上短縮したもの
9号:1足の第3の足指以下の1又は2の足指を失ったもの
10号:1足の第2の足指の用を廃したもの、第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの又は第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの
11号:胸腹部臓器の機能に障害を残すもの

 

1~11号の傷害部位と認定基準

1号 眼の視力が0.6以下になったもの

1号 眼の視力が0.6以下になったもの

視力障害の中で最も低い後遺障害であり、視力そのものが下がってしまった、あるいは何らかの視力障害が残ってしまった場合に認定されます。正常な状態でも、視力が落ちて矯正視力が0.6以下の方もいるかと思いますが、交通事故が原因で視力が低下し、裸眼視力ではなくメガネなどで視力矯正をした後でも0.6以下というのが条件になります。もともとの視力が0.6以下ないし、事故後、0.6以上であれば認定はされません。

視力の測定は,原則として,万国式試視力表によるが,実際上これと同程度と認められる文字,図形等の視標を用いた試視力表又は視力測定法を用いてよいこととされている。視力とは,きょう正力をいい,きょう正力には,眼鏡によるきょう正力,医学的に装用可能なコンタクトレンズによるきょう正又は眼内レンズによるきょう正によって得られた視力が含まれます。
きょう正力による等級認定は,次のルールで等級を認定します。
・角膜の不正乱視が認められず,かつ,眼鏡による完全きょう正を行っても不等像視を生じないものについては,眼鏡によりきょう正した視力を測定して等級を認定します。
・これ以外の者については,コンタクトレンズの装用が医学的に可能であり,かつ,コンタクトレンズによるきょう正を行うことにより良好な視界が得られる場合には,コンタクトレンズによりきょう正した視力を測定して等級を認定することとなります。
・眼鏡による完全矯正を行えば,不等像視を生ずる場合であって,コンタクトレンズの装用が不能な場合には,眼鏡矯正の程度を調整して不等像視の出現を回避し得る視力により等級を認定します。
・コンタクトレンズの装用の可否及び視力の測定は,コンタクトレンズを医師の管理下で3か月間試行的に装用し,その後に行います。

 

2号 正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの

「複視」とは,右眼と左眼の網膜の対応点に外界の像が結像せずにずれているために,ものが二重にみえる状態であり,麻痺した眼筋によって複視が生じる方向が異なります。

「複視を残すもの」とは,次のいずれにも該当するものをいいます。
・本人が複視であることを自覚していること
・眼筋の麻痺等複視を残す明らかな原因が認められること
・ヘススクリーンテストにより患側の像が水平方向又は垂直方向への目盛りで5度以上離れた位置にあることが確認されること

眼の運動機能障害に関する後遺障害であり、複視とは、ひとつしかないものが二重に見える症状のことで、見えかたとしては乱視に似ていますが、乱視と違う点としては、乱視は片目で見ても物が二重に見るのに対して、複視は両目で見ているときでも物が二重に見えてしまいます。この複視の症状が常にあり、正面以外の物を見たときでも複視の状態であれば、第13級2号に該当しますが、正面の物を見ても複視の症状が出てしまう場合は、後遺障害等級第10級2号に該当することになります。交通事故で目に怪我を負ってしまった場合、13級の後遺障害も後遺障害等級10級になる可能性がありますので、交通事故で眼や頭にけがを負った場合は、頭部の外傷や眼の周囲の骨折などにより、眼球の動きをコントロールする神経や筋肉に障害が残ることで起きるものです。眼科での検査をお勧めします。

※複視を残す場合,併せて頭痛等の神経症状を残すことが多いですが,これらは複視によって派生的に生じているものであり,症状としても複視とは別途に独立して評価する必要のない程度のものです。

複視の有無は,指標を赤緑ガラスで見た時の片眼の赤像,他眼の緑像から両眼の位置ずれを評価するヘススクリーンテストという眼球運動検査を行うことにより測定します。

 

3号 1眼に半盲症、複視狭窄又は視野変状を残すもの

「半盲症,視野狭窄及び視野変状」とは,V/4視標による8方向の視野の角度の合計が,正常視野の角度の60%以下になった場合をいいます。
視野障害と呼ばれるものであり、片目に半盲症(視野の右半分あるいは左半分が欠けて見えなくなる症状)や視野狭窄などの障害が残ってしまった場合に認定され、視野というのは、1点を見つめた時に見える下界の範囲のことで、具体例としては、歩いているとやたら右側の壁などにぶつかる、ご飯を食べようとしたら、皿の右半分が見えないといった症状が該当します。
健康な眼は、視野は補われますが、交通事故でけがを負う前と比べれば、日常生活に支障が出やすい障害ですので、早めの検査をお勧めします。

※半盲症・・視神経交叉部およびそれより上部の視覚神経伝導路が障害され,両眼の視野にほぼ同様の欠損が現れた状態。視野の右半分あるいは左半分が欠けて(欠損)見えなくなる症状です。

※視野狭窄・・視野が狭くなる症状で、視野の全体が狭くなる求心狭窄と、視野の一部分が不規則な形で狭くなる不規則狭窄とがあります。

※視野変状・・「視野変状とは、半盲症、視野の欠損、視野狭窄及び暗点が含まれますが、半盲症及び視野狭窄については障害等級表に明示されていますので、ここにいう視野変状は、暗点と視野欠損をいいます。
暗点とは、生理的視野欠損(盲点)以外の病的欠損を生じた者をいい。中心性漿液性脈略網膜炎、網膜の出血、脈絡網膜炎等にみられます。

 

4号 両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの

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「まぶたの一部に欠損を残すもの」とは、まぶたを閉じた際に、角膜は覆うことができるものの、白目の部分(球結膜)が露出している程度の欠損をいい、「まつげはげを残すもの」とは、まつげの生えている周縁部分に、1/2以上のまつげのはげを残すものを言います。

 

5号 5歯以上に対し歯科補綴を加えたもの

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「歯科補綴を加えたもの」とは,現実に喪失又は著しく欠損した歯牙に対する補綴をいいます。
※有床義歯又は架橋技師等を補綴した場合における支台冠又はポストインレー等を行うことですむ歯は,補綴した歯としては数えません。

人間の永久歯は、上下それぞれ14本づつ計28本ありそのうち約5/1以上に障害が残った状態で「歯科補綴を加えたもの」とは、歯を喪失したものや、著しく欠損したもの(歯冠部、つまり歯茎から出ていて客観的に見える歯の体積4分の3以上を欠損し たもの)について、補綴(ほてつ)したものを指し、補綴とは、欠損した部位の形態と機能を人工物で補うことをいいます。但し、第三大臼歯(親知らず)、乳歯などは、対象外になります。しかし乳歯については、永久歯が生えないという医師の 証明があれば認定の対象となります。
また、前歯、奥歯といった場所の区別はなく、事故後、歯科医において入れ歯、差し歯、ブリッジ、インプラント等の治療を受け、日常生活に支障が感じなくなったとしても、後遺障害として賠償を求めることは可能です。

14歯以上に補綴を加えたもの→第10級4号
10歯以上に補綴を加えたもの→第11級4号
7歯以上に補綴を加えたもの→第12級3号
5歯以上に補綴を加えたもの→第13級5号
3歯以上に補綴を加えたもの→第14級2号

 

6号 1手の小指の用を廃したもの

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「小指の用を廃したもの」とは,小指の末節骨の半分以上を失い又は中手指節関節もしくは近位指節間関節に著しい運動障害をのこすものをいいます。

手指の機能障害で一番低い後遺障害であり、片手の小指に後遺障害が残ってしまった場合に認定されます。

具体的には、
・小指の末節骨(第一関節より先の骨)が欠損し、長さが2分の1以下になったもの
・小指の根元、あるいは第二関節の可動範囲が2分の1以下になったもの
・小指の感覚がまったく無くなってしまったもの

上記の症状のうち、いずれかに該当すれば第13号6号として認定されます。

 

7号 1手のおや指の指骨の一部を失ったもの

「指骨の一部を失ったもの」とは,1指骨の一部を失っていることがエックス線写真等により確認できるものをいいます。

片手の親指に関する後遺障害等級で、事故によって親指の骨の一部が欠けてしまったケース、実際に欠損はしていなくても、骨がくっつかない「遊離骨折」の場合は、レントゲン写真などで確認されれば,後遺障害等級第13級7号に認定されます。
骨の欠損が一定以上であれば,後遺障害等級は上がりますので、この際の後遺障害等級認定は専門家に相談した方がいいでしょう。ちなみに、左右どちらの手であっても等級に変化はありません。つまり利き手、利き腕の評価は等級のアップには関係ないとみなされています。

 

8号 1下肢1センチメートル以上短縮したもの

下肢の短縮障害で最も低い後遺障害であり、片方の足が1cm以上 3cm 未満短くなった状態を指し、一般的に歩行障害等が発症する長さとしては3センチメートル以上と言われています。

短縮については,上前腸骨棘と下腿内下端間の長さを,反対側の通常とおりの方の足と比較して測定することによって認定する。

 

9号 1足の第3の足指以下の1又は2の足指を失ったもの

★http://www.koutsubengo.com/_p/707/images/pc/f93baca0.jpg

「足指を失ったもの」とは,その全部を失ったものをいい,具体的には,中足指節関節(指の付け根)から失ったものをいいます。

足指の欠損障害の中で最も低い後遺障害であり、片足の足指のうち、中指、薬指、小指にあたる箇所のうち1本、もしくは2本を失った場合に認定されます。

 

10号 1足の第2の足指の用を廃したもの、第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの又は第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの

「足指の用を廃したもの」とは,第1(親指)の足指は末節骨の半分以上,その他の指は遠位指節間関節以上を失ったもの又は中足指指節関節もしくは近位指節間関節に著しい運動障害を残すものをいいます。

足指の機能障害に関する後遺障害で、足の人差し指、人差し指を含む2本の足指、中指、薬指、小指の3本の用を廃した場合に認定されます。
・片足の足指のうち、「人差し指」が第一関節から根元より手前で切断した場合、指の可動域が2分の1以下になったもの
・片足の足指のうち、「人差し指」1本と「中指」「薬指」「小指」の3本のうち1本が第一関節から根元より手前で切断したもの、そして指の可動域が2分の1以下になったもの
・片足の足指のうち「中指」「薬指」「小指」の3本すべてが第一関節から根元より手前で切断した場合、もしくは可動域が2分の1以下になったもの

後遺障害等級表の指の障害でわかりづらいのは、「失った」と「用を廃した」の違いであり、「失った」というのは、指を根元から切断してしまった場合、「用を廃した」というのは指の大部分を失ったケースも含みます。

 

11号 胸腹部臓器の機能に障害を残すもの

11号 胸腹部臓器の機能に障害を残すもの

交通事故の事案では、臓器に損傷を受けることも珍しくはなく、胸腹部臓器の機能に障害を残すものであり、内臓器の機能障害の中で最も低い後遺障害となります。

たとえば・・・
・胃の全部、あるいは一部を切除したもの
・脾臓を失ったもの
・胆嚢を失ったもの
・腎臓を失う。著しく腎機能を失ったもの
・生殖行為は可能だがその機能に障害が残る場合
・一側の睾丸や卵巣が失われた場合

 

後遺障害等級13級の損害賠償額の計算例

40歳の会社員
事故前の年収450万円

後遺障害等級13級に該当したとして仮定した場合の後遺障害に関する損害額(弁護士会基準での計算)

後遺障害等級慰謝料・・・180万円

逸失利益・・・593万415円
450万円(基礎収入)×0.09(労働能力喪失率)×14.6430(労働能力喪失期間27年間のライプニッツ係数)=593万415円

 

まとめ

13級の労働能力喪失率は9%と、程度としては軽いレベルと判断され、この等級の後遺障害は、医師の判断からも客観的に判断しやすいものも多いといえると思います。
日常生活に多大な影響を与えるほどの後遺症ではないと言われていますが、、認定されている症状を見ても損害賠償を請求しないと、医療費などの面から見ても、少なからず苦労を強いられることも多くなる後遺障害等級といえます。