後遺障害等級:第1級・第2級(介護を要する後遺障害)認定の基準
交通事故による後遺障害等級で、要介護を伴う、最も重い後遺障害とされるのが第1級・第2級です。要介護のレベルの違いこそあれ、精神、神経系統、胸腹部臓器に障害が残り、普通の社会生活を送るのは困難であり、完全に労働能力を失ったと判断され、労働能力喪失率も100%とみなされます。
損害保険料率算出機構が、出している自賠責保険の後遺障害等級別の件数構成比によりますと、後遺障害等級認定を受けた人の内、1.25%が1級、0.67%が2級の認定を受けています(平成25年度)。
後遺障害等級認定を受けることにより、自賠責保険の保障対象は、逸失利益と後遺障害慰謝料を損害賠償として請求することができます。
目次
後遺障害等級1級・2級の2つ認定条件
条件は以下の表の通りです。
等級 | 部位 | 障害の程度 | ||
---|---|---|---|---|
一級 | 神経系統又は精神の障害 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの | ||
腹部臓器の障害 | 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの | |||
二級 | 神経系統又は精神の障害 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの | ||
腹部臓器の障害 | 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの |
要介護状態における、第1級と第2級の違いは、介護レベルの違いであり、常に介護を要するのものと、随時介護を要するものとの違いにあります。
高次脳機能障害により後遺障害の1級の認定を受けるためには、「神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」である必要があるとされています
「常に介護を要するもの」とは、「重篤な高次脳機能障害のため、食事・入浴・用便・更衣等に常時介護を有するもの」を意味します。
「随時介護を要するもの」とは、「著しい判断力の低下や情動の不安定などがあって、ひとりで外出することができず、日常の生活範囲は自宅内に限定されて、身体動作的には排泄、食事などのひとりで行うことができても、生命維持に必要な身辺動作に、家族からの声掛けや看視を欠かすことができないもの」を意味します。
第1級の傷害部位と認定基準
第1級1号 神経系統の機能もしくは精神に大きな障害が残り、常に介護が必要
脳や神経に深刻な損傷を負い、高次脳機能障害や遷延性意識障害(植物状態)、脊髄損傷等により、生命を維持するには常に介護が必要となった状態です。
第1級2号 胸腹部臓器の機能に大きな障害が残り、常時介護が必要
介護を要する後遺障害の中で、胸部・腹部の内臓の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するものです。
呼吸器、循環器、腹部臓器(食道、胃、小腸、大腸、肝臓、胆のう、膵臓、脾臓、腹壁瘢痕ヘルニア等)、泌尿器、生殖器の障害に分類されます。
第2級の傷害部位と認定基準
第2級1号 神経系統の機能もしくは精神に大きな障害が残り、随時の介護が必要
脳や神経に深刻な損傷を負い、高次脳機能障害や遷延性意識障害(植物状態)、脊髄損傷等により、生命を維持するには介護が必要となった状態です
第2級2号 胸腹部臓器の働きに大きな障害が残り、随時の介護が必要
介護を要する後遺障害の中で、胸部・腹部の内臓の機能に著しい障害を残し、随時、介護を要するものです。
呼吸器、循環器、腹部臓器(食道、胃、小腸、大腸、肝臓、胆のう、膵臓、脾臓、腹壁瘢痕ヘルニア等)、泌尿器、生殖器の障害に分類され、介護のレベルの基準が変わってきます。
後遺障害1級及び2級かつ要介護の場合の慰謝料
重度の後遺障害が残る場合、周囲に与える様々な影響を考慮して近親者にも慰謝料が認められる場合があります。凶暴性を伴う高次脳機能障害で、周囲も関わる中でその影響を受けざるを得ないと判断された場合や、単純に周囲にも大きな精神的苦痛を伴ったと考えられる場合などです。
また、要介護と認定された場合は、その必要な介護の程度に応じて、将来介護費も被害者本人の損害として認められます。
常時介護が必要と判断された場合は基本に職業介護人の実費全額が認められ、随時介護の場合は近親者付き添い人として日額8000円とされますが、具体的な状況に応じて増減することがあります。
後遺障害等級1級の損害賠償額の計算例
50歳の会社員
事故前の年収850万円
後遺障害等級1級に該当したとして仮定した場合の後遺障害に関する損害額(弁護士会基準での計算)
後遺障害等級慰謝料・・・4000万円
逸失利益・・・ 9582万9850円
850万円(基礎収入)×1.0(労働能力喪失率)×11.2741(労働能力喪失期間17年間のライプニッツ係数)=9582万9850円
後遺障害等級2級の損害賠償額の計算例
45歳の会社員
事故前の年収800万円
後遺障害等級2級に該当したとして仮定した場合の後遺障害に関する損害額(弁護士会基準での計算)
後遺障害等級慰謝料・・・3000万円
逸失利益・・・ 1億530万4000円
800万円(基礎収入)×1.0(労働能力喪失率)×13.1630(労働能力喪失期間22年間のライプニッツ係数)=1億530万4000円
まとめ
最近は、医療技術の発展により、一命を取り留めるケースも、数多くあります。しかし、重い後遺障害が残り、生涯介護が必要とされるケースも増えています。介護費用も含め示談交渉を、検討する必要性があります。
後遺障害等級の第1級・第2級については、労働能力喪失率は100%と判断され、介護が必要な重い障害が残り、日常の社会生活を送ることは困難であり、社会生活および就労はできない状態で、将来的にかかるであろう金額(介護費用)についても、しっかり請求しましょう。
介護費用に関しては、必要性があり、根拠がきっちり主張出来れば、通常なら家族による随時の介護で十分と判断される障害の程度でも、職業介護人の利用が認められたり、家族の介護と職業介護人の利用両方の必要性を認められる事もあります(受傷者が非常に大柄な体格で、家族は小柄な女性が一人だけの場合、通常なら家族の介護で十分とされるところを職業介護人の利用が認められる等)。これほどの後遺障害になってくると、職業介護人が必要か否か、或いはそれを必要とする期間など、一つ一つが非常に金額としても大きな差をもたらします。後々になって困ることのないよう、弁護士に相談してしっかりと対策を取っていきましょう。