後遺障害等級:第3級(1号~5号)認定の基準
後遺障害等級3級は、視力、言語の障害、神経系統の障害、内臓障害、手の障害の5つに分類されており、労働能力喪失率は、1級、2級と同様に100%になっています。
損害保険料率算出機構が、出している自賠責保険の後遺障害等級別の件数構成比によりますと、後遺障害等級認定を受けた人の内、0.50%が3級の認定を受けています(平成25年度)。
後遺障害等級認定を受けることにより、自賠責保険の保障対象は、逸失利益と後遺障害慰謝料を損害賠償として請求することができます。
後遺障害等級の5つ認定条件とは
後遺障害第3級は、障害を負った部位によって1号から5号まで分類されています
等級 | 部位 | 障害の程度 | ||
---|---|---|---|---|
三級 | 視力の障害 | 1眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になったもの | ||
口の障害 | 咀嚼又は言語の機能を廃したもの | |||
神経系統の機能又は精神の障害 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服する事ができないもの | |||
胸腹部臓器の障害 | 胸腹部臓器に著しい障害を残し、終身労務に服する事ができないもの | |||
上肢の障害 | 両手の手指の全部を失ったもの |
1~5号の傷害部位と認定基準
片目が失明して、もう片方の目の視力が0.06以下になったもの
後遺障害認定基準上の失明とは、眼球を摘出し明るさや暗さがわからない、また、ようやく明るさや暗さがわかる程度のことをいいます。失明には、光覚弁(明暗弁)や手動弁が含まれます。
※光覚弁とは、暗い部屋で被験者の眼前で照明を点滅させて、明るさや暗さが判別できる能力のことをいいます。
※手動弁とは、検者の手拳を被験者の眼前で上下左右に動かして、動きの方向を判断できる能力のことをいいます。
失明していない方の視力が、裸眼視力ではなく、矯正視力(眼鏡やコンタクトレンズで補った視力)が0.06以下の場合に認定されます。
視力障害に関する後遺障害は、数値が出しやすいため、他の後遺障害に比べると認定が得られやすい傾向にあります。
噛み砕く能力かもしくは言語を発する機能を失ったもの
咀嚼とは、食べ物を噛んで飲み込む機能と、言葉を話す機能に障害が残った場合に認定されます。両方とも口や顎あるいは舌といった部位を使う機能ですので、咀嚼機能に障害が出れば言語機能にも影響が出てくるのはよくあることです。咀嚼機能と、言語機能の両方の機能に問題が残った場合に認定されます。
具体的には、流動食物(たとえば、味噌汁、スープ)以外は、食べることができない状態です。
言語の機能に障害を残すものとは、4つの子音のうち3つ以上が発音できなくなった状態が該当します。
4つの子音とは、具体的には次の通りです。
・口唇音/ま行音・ぱ行音・ば行音・わ行音、ふ
・歯舌音/な行音・た行音・ら行音・ざ行音・しゅ・じゅ・し
・口蓋音/か行音・が行音・や行音・ひ・にゅ・ぎゅ・ん
・咽頭音/は行音
咀嚼障害と言語障害どちらか一つが残った場合認定されます。
神経系統の機能かもしくは精神に大きな障害を残し、生涯に渡って仕事に就くことが出来ないもの
・交通事故によって脳や神経に深刻なダメージを受け、生命維持に必要な身の回り処理の動作は可能であるが、高度の神経系統の機能または精神の障害のため、終身にわたりおよそ労務につくことができないもの
・自宅周辺を一人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されておらず、また、声掛けや、介助なしでも日常の動作を行えるが記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持能力等に著しい障害があり、一般就労が全くできないか、困難なものが、該当します。
高次脳機能障害による記憶力、注意力はどの低下や性格の変貌などわかりにくいため認定に時間がかかったり、認定そのものが困難な場合もあります。
胸部、腹部の臓器に重大な障害を残し、生涯にわたって仕事に就くことができないもの
交通事故によって、胸腹部の臓器の損傷がおきることは珍しくありません
胸腹部臓器の後遺障害に関しては、呼吸器、循環器、腹部臓器(食道、胃、小腸、大腸、肝臓、胆のう、すい臓、脾臓等)、泌尿器(じん臓、尿管、膀胱、尿道)、生殖器の障害などにより日常生活、自宅周辺の散歩などはできても、生涯にわたって仕事に就くことができない場合、認定されます。主に呼吸器系(肺など)、循環器系(心臓など)になります。
血中の酸素濃度など検査等で数字が出せますので、3号に比べて認定は受けやすいと思われます。
両手の全ての指を失ったもの
手指を失ったものとは、親指では IPより先、その他の指では PIP より先を失ったもの、母指にあっては指節間関節、その他の指にあっては近位指節間関節以上を失ったものとされています。
具体的には次の場合が該当します。
・手指を中手骨または基節骨で切断したもの
・近位指節間関節(母指の場合は、指節間関節)で、基節骨と中節骨とを離断したもの
・「指骨の一部を失ったもの」とは、1指骨の一部を失っている(遊離骨片の状態を含みます)
ことがエックス線写真等により確認できるものをいいます。
後遺障害等級3級の損害賠償額の計算例
45歳の会社員
事故前の年収850万円
後遺障害等級3級に該当したとして仮定した場合の後遺障害に関する損害額(弁護士会基準での計算)
後遺障害等級慰謝料・・・1990万円
逸失利益・・・1億1188万5500円
850万円(基礎収入)×1.0(労働能力喪失率)×13.1630(労働能力喪失期間22年間のライプニッツ係数)=1億1188万5500円
まとめ
後遺障害等級の第3級までは労働能力喪失率は100%と判断される重い障害が残り、日常生活は何とかできても、社会生活および就労はできない状態で、事故前の生活に戻ることはほぼ不可能です。
後遺障害の状態によっては、介護が必要なケースもでてきますし、そこまでではなかったとしても生活する場所や移動手段などに関しても必要な費用が認められる場合があります。しっかり請求しましょう。