第7級(1号~13号)認定の基準

交通事故の後遺障害等級7級は、後遺障害の部位は多く、眼、耳の障害、神経系統、内臓、手足指で、全部で13に分類されており、労働能力喪失率は56%になっています。
該当する障害が増えてくるため、専門的な知識も必要となり、治療過程や立証方法などによって認定等級に差が出ることがあります。
自賠責保険の、後遺障害等級別の件数構成比によりますと、後遺障害等級認定を受けた人の内、1.67%が、7級の認定を受けています(平成25年度)

後遺障害等級認定を受けることにより、自賠責保険の保障対象は、逸失利益と後遺障害慰謝料を損害賠償として請求することができます。

後遺障害等級7級の13の認定条件とは

等級部位障害の程度
7級視力の障害1眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの
耳の障害両耳の聴力が40cm以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
耳の障害1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1m以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
耳の障害1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40cm以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
神経系統の機能と精神の障害神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
胸腹部臓器の障害胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
上肢の障害1手のおや指を含み3の手指を失ったもの又は親指以外の4の手指を失ったもの
上肢の障害1手の5の手指又はおや指を含み4の手指の用を廃したもの
下肢の障害1足をリスフラン関節以上で失ったもの
上肢の障害1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
下肢の障害1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
下肢の障害両足の足指の全部の用を廃したもの
外貌の醜状障害外貌に著しい醜状を残すもの
胸腹部臓器の障害両側の睾丸を失ったもの

1~13号の傷害部位と認定基準

片目が失明し、もう片方の視力が0.6以下になったもの

交通事故の障害で片目の失明、矯正視力で0.6以下になってしまった場合に該当し、コンタクトレンズ、眼鏡によって矯正した後の測定値とします。矯正視力で、0.6程度の人は、たくさんいらっしゃいますが、片目を失明していた場合は、日常生活にも支障をきたす場合が多くあり、後遺障害は高めの設定になっています。

両耳の聴力が40センチメートル以上の距離で普通の話声を聞き取る事が出来ないほど低くなってしまったもの
片耳の聴力を完全に失い、もう片方の耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を聞き取る事が出来ないほど低くなってしまったもの

これらは聴力に関する分類になります。

前者は、両耳の聴力が、40センチメートル以上の距離では、普通の声で話される会話が、理解できなくなる程低下すれば認定されます。単純な音が聞き取れるか(純音)、言葉を言葉として聴き取れるか(明瞭度)の2種類の検査を行います。
両耳の平均純音聴力レベルが70dB以上のもの、または、両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上であり、かつ、最高明瞭度が50%以下のものをいいます。

後者は、片耳の聴力が完全に失われ、もう片方の耳の聴力が、1メートル以上の距離では、普通の声で話される会話が、理解できなくなる程低下すれば認定されます。
数値としては、1耳の平均純音聴力レベルが90dB以上であり、かつ、他耳の平均純音聴力レベルが60dB以上のものをいいます。

神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
腹胸部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの

これらはは原因別に分類しされており、

前者は脳の障害や神経障害によって、労働能力が下がった場合に認定されます。

具体的な症状として、高次脳機能障害、脊髄損傷等による手足の中程度の麻痺、外傷性てんかんなどが、該当します。

・脳の損傷による麻痺
障害のある上肢または下肢の運動性・支持性が多少失われており、障害のある上肢または下肢の基本動作を行う際の巧緻性及び速度が相当程度損なわれていることをいいます。障害を残した一上肢では、文字を書くことに困難を伴うもの、日常生活は概ね独歩できるが、障害を残した一下肢を有するため不安定で横転しやすく、速度も遅いもの又は障害を残した両下肢を有するため、杖もしくは、硬性装具なしには、階段を上ることができないもの

・脳の器質的な損傷を伴わない精神障害(非器質性精神障害)
交通事故の後にうつ、不安、フラッシュバック等の精神症状が出てしまい、労働能力が失われた場合です。判断が難しい症状なので、専門医による診断、交通事故により後遺障害になった証明する必要があります。

・外傷性てんかん
薬を内服して、数ヵ月に1回程度発作が起きるようなケースが該当します。

・頭痛・頭重感
頭部に負った傷や血管への圧迫、三叉神経、交感神経の問題などで起こる頭痛によって労働に従事できない場合が該当します。

・その他
めまいや平衡感覚障害、RSDなどの神経性の疼痛などによって労務に支障をきたすケースが該当します。

中程度の神経系統の機能または精神の障害のため、精神身体的な労働能力が一般平均人以下に明らかに低下しているもので、一般就労を維持できるが、作業の手順や効率が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことができないものとされています。

後者の腹胸部臓器の機能に障害とは、呼吸器障害、心臓障害など一般的に身体といわれる部位に後遺障害が残り、それが原因で労働能力が「軽易な労務」の基準以上に失われた状態です。

(1)呼吸器
肺の機能低下、動脈血酸素分圧(動脈血に含まれる酸素の圧力)が、60Torrwoを超え70Torr以下、動脈血炭酸ガス分圧(動脈血に含まれる炭酸ガスの圧力)が、37Torr以上43Torr以下になってしまった場合に該当します。詳しい症状については、医師の判断を受けましょう。

(2)心臓
心臓機能低下、強度の身体活動が制限されるもの(例:平地を健康な人と同じ速度で歩くのは差し支えないものの、平地を急いで歩く、健康な人と同じ速度で階段を上るという身体活動が制限されるもの)、ペースメーカーの植え込みが必要になってしまった場合が該当します。

(3)消化器
・食道の狭さくによる通過障害を残すもの
・胃の切除により生じる症状
消化吸収障害及びダンピング症候群
消化吸収障害及び胃切除術後逆流性食道炎が認められるもの
・小腸の障害
残存する空腸及び回腸(以下「残存空・回腸」という。)の長さが100cm以下となったもの
・肝臓の障害  肝硬変(ウイルスの持続感染が認められ、かつ、AST・ALTが持続的に低値であるものに限る。)
・すい臓の障害
外分泌機能の障害と内分泌機能の障害の両方が認められるもの、
・腹壁瘢痕ヘルニア、腹壁ヘルニア、鼠径ヘルニア又は内ヘルニアを残すもの
常時ヘルニア内容の脱出・膨隆が認められるもの、又は立位をしたときヘルニア内容の脱出・膨隆が認められるもの

(4)泌尿器の障害
・腎臓の障害
腎臓の障害に係る障害等級は、腎臓の亡失の有無及び糸球体濾過値(以下「GFR」という。)による腎機能の低下の程度が、腎臓を失っていない場合は、GFRが、30ml/分を  超え50ml/分以下、一側の腎臓を失った場合は、GFRが50ml/分を超え70ml/分以下となったもの
・尿管、膀胱及び尿道の障害
尿禁制型尿路変向術(禁制型リザボア及び外尿道口形成術を除く。)を行ったもの
蓄尿障害を残し、常時パッド等を装着しなければならないが、パッドの交換までは要しないもの
残尿が100ml以上であるもの

臓器の損傷が労働能力喪失率に与える影響は、個々の症状に左右されることとなるため、判定することは難しいと言えます。

片手のおや指を含めた3本の指を失ったもの、または、親指以外の4本の指を失ったもの
片手の全ての指、または親指を含む4本の指がほぼ動かせなくなったもの

事故によって、片手のおや指を含む3本の手指のを失った場合、又はおや指以外の4本の手指すべてを失った場合、6号に認定されます。
片手のすべての指、あるいはおや指を含めた4本の指の機能を失った場合、7号に認定されます。
「手指の用を廃したもの」とは、手指の末節骨の半分以上を失い、または中手指節間関節もしくは近位指節間関節(母指の場合は指節間関節)に著しい運動障害を残すものとされています。具体的には、次の場合が該当します。

・手指の末節骨の長さの1/2以上を失ったもの
・中手指節間関節または近位指節間関節(母指の場合は指節間関節)の可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されている場合
・母指については、橈側外転または掌側外転のいずれかが健側の1/2以下に制限されている場合も、「著しい運動障害を残すもの」として取り扱います。
・手指の末節の指腹部および側部の深部感覚および表在感覚が完全に脱失した場合

この場合、指の切断というよりは、麻痺などによって動かなくなった場合です。

「指先の感覚がありません」などと自己申告のみで決めるものではありません。医学的に判断する必要があります。

具体的には、

(1)医学的に当該部位を支配する感覚神経が断裂しうると判断される外傷を負った事実を確認するとともに、

(2)筋電計を用いた感覚神経伝導速度検査を行い、感覚神経活動電位(SNAP)が検出されないことを確認することによって認定されます。

なお、1手と定められていますので、障害を負った手が、右手、左手どちらでも、認定等級は、同じです。

片足をリスフラン関節より膝関節側で失ったもの

片足の、足首からリスフラン関節の間で切断されてしまった場合、認定されます。
部分的には狭い範囲ですが、歩くために必要な部分を失うことになりますので、この部分があると無いとでは大きな違いがあります。
※リスフラン関節とは、足の甲の中央あたりにある関節です。

片腕に偽関節を残し、重大な運動する上での障害を残すもの
片足に偽関節を残し、著しい運動する上での障害を残すもの

腕か足の違いだけで後遺障害の内容は同じものです。

偽関節とは、一般に、長管骨(上肢においては上腕骨、橈骨及び尺骨をいい、下肢においては大腿骨、脛骨及び腓骨をいいます。)骨折後のゆ合が不完全である(つながらない)ため、本来関節ではない部分が一見関節であるかのように異常可動するものをいいます。

偽関節が原因で仕事や日常作業において、保護具をつければ動作に支障がない場合に認定されます。
しかし、医学の進歩により、再手術などに適切な治療にて根治できるケースが殆どですので、後遺障害として適用されることは少なくなりました。

両足の指が全て動かせなくなったもの

両足の足指の機能障害による後遺障害です。
足指の機能を失うと、立っていること、歩いたり、走ったりすることに支障が出ます。

機能障害における「用を廃した」とは、
・第1の足指(親指)は末節骨(足指先部分の骨)の1/2以上
・その他の足指は遠位指節間関節(足指先から1番目の関節)以上を失ったもの
・中足指節関節もしくは近位指節間関節(足指先から2番目の関節。親指については1番目の関節)の可動域が健側の可動域角度の1/2に制限されるものとされています。

外貌に重大な醜く見える痕を残すもの

外貌(ガイボウ)とは、手と腕(上肢)、脚と足(下肢)以外で日常的に目の触れる部位、つまり頭・顔・首などをいいます。醜状とは、原則として以下のどれかに該当するもので、人目につく程度以上の大きさのものをいいます。

12号においての、著しい醜状を残すものとは、以下のような傷が残ったケースが該当します。

・頭部にあっては、手のひら大(指の部分を含まない)以上の瘢痕又は頭蓋骨の手のひら大以上の欠損
・顔面部にあっては、鶏卵大面以上の瘢痕又は10円銅貨大以上の組織陥没
・頚部にあっては、手のひら大以上の瘢痕
・耳殻(耳の外側に張り出している全体部分)の1/2以上が欠けてしまった場合
・鼻軟骨のすべて、または大部分が欠けてしまった場合

これらはいずれも、人目に付く程度以上のものでなければならないとされているため、眉や頭髪に隠れる部分については、醜状として扱われません。

ちなみに、以前は「女子の外貌」というように女性に限定されていましたが、2010年6月の法改正により現在は男性にも上記基準が適用されます。

両側の睾丸を失ったもの

13号は、事故によって睾丸を両方とも失った場合認定されます。
男女ともに適用されます。

・両側の睾丸を失ったもの
・両側の卵巣を失ったもの
・常態として精液中に精子が存在しないもの
・常態として卵子が形成されないもの

ただし、精子や卵子ができなくなってしまった症状は、一時的なものではなく、常態化してしまったことが認定の条件になります。

後遺障害等級7級の損害賠償額の計算例

45歳の会社員

事故前の年収600万円

後遺障害等級7級に該当したとして仮定した場合の後遺障害に関する損害額(弁護士会基準での計算)

後遺障害等級慰謝料・・・1000万円

逸失利益・・・4422万7680円
600万円(基礎収入)×0.56(労働能力喪失率)×13.1630(労働能力喪失期間22年間のライプニッツ係数)=4422万7680円

まとめ

後遺障害等級7級は、労働能力損失率は56%とかなり高く、重度の後遺障害とされて介護が必要となるケースもあります。しかし、「軽易な労務以外の労務に服することが出来ない」レベルとされています。しかし、ただし、「軽易な労務」のガイドラインがはっきりとしていないため、専門家以外の人にはなかなか理解を得られなかったりする面もあります。
この辺りから治療過程や立証の仕方などによって、認定される等級に差が出る事があります。

もし等級の認定や補償金に不満がある場合は、弁護士などの専門家に相談した方がいいでしょう。