後遺障害等級:第8級(1号~10号)認定の基準

交通事故の後遺障害等級8級は、眼、脊柱、手指、手足の関節等、全部で10に分類されており、四肢の損失、障害が中心で、中間に位置する等級にしては、比較的判断しやすい後遺障害が多いのが特徴で、労働能力喪失率は、45%なっています。

自賠責保険の、後遺障害等級別の件数構成比によりますと、後遺障害等級認定を受けた人の内、3.04%が、8級の認定を受けています(平成25年度)

後遺障害等級認定を受けることにより、自賠責保険の保障対象は、逸失利益と後遺障害慰謝料を損害賠償として請求することができます。

後遺障害等級8級の10の認定条件とは

等級部位障害の程度
8級視力の障害1眼が失明し、又は他眼の視力が0.02以下になったもの
脊柱及びその他体幹骨の障害脊柱に運動障害を残すもの
上肢の障害1手のおや指を含み2の手指を失ったもの又は親指以外の3の手指を失ったもの
上肢の障害1手のおや指を含み3の手指の用を廃したもの又は親指以外の4の手指の用を廃したもの
下肢の障害1下肢を5cm以上短縮したもの
上肢の障害1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
下肢の障害1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
上肢の障害1上肢に偽関節を残すもの
下肢の障害1下肢に偽関節を残すもの
下肢の障害1足の足指の全部を失ったもの

傷害部位と認定基準

片目が失明したもの、又は片目の視力が0.02以下になったもの

交通事故の障害で、片目の失明、矯正視力で0.02以下になってしまった場合に該当し、失明した方が認定される等級で最も低い認定となります
。これは、障害が残るのは片目だけで、もう一方の目は事故による障害が全くない状態なので、実生活を送れなくなるほどの障害ではないだろうと考えられているためです。

片方の眼の障害であり、もう片方の眼は事故による障害の影響はなく正常であることが必要になります。

なお、障害が残った眼が右、左目かという区別はありません。

脊柱が変形し、動かす上での障害が残ったもの

脊柱とは、背骨のことで、これを構成する骨を脊柱といい、脊柱は7つの頚椎、12の胸椎、5つの腰椎、仙骨、尾骨から成り立っています。交通事故において大きなダメージを与えることがあります。
これらの骨が変形し神経を圧迫し、麻痺等の運動障害が起こります。

具体的には
1.頚椎又は胸腰椎にX線写真等により確認できる頚椎又は胸腰椎の脊椎圧迫骨折等を残し、これにより頚部又は胸腰部の可動域が参考可動域角度の1/2以下に制限されたもの
2.頚椎又は胸腰椎に脊椎固定術が行われ、これにより頚部又は胸腰部の可動域が参考可動域角度の1/2以下に制限されたもの
3.項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められ、これにより頚部又は胸腰部の可動域が参考可動域角度の1/2以下に制限されたもの
4.頭蓋・上位頚椎間に著しい異常可動性が生じたもの

片手の親指を含む2本の指を失ったもの、又は親指以外の3本の指を失ったもの
片手の親指を含む3本の指、又は親指以外の4本の指の機能を失ったもの

事故によって片手のおや指を含む2本の指を失ったもの、又はおや指以外の3本の指を失った場合、3号になります。

片手のおや指を含み3の手指の用を廃したもの又はおや指以外の4の手指の用を廃した場合、4号になります。

「手指の用を廃したもの」とは、手指の末節骨の半分以上を失い、または中手指節間関節もしくは近位指節間関節(母指の場合は指節間関節)に著しい運動障害を残すものとされています。具体的には、次の場合が該当します。

・手指の末節骨の長さの1/2以上を失ったもの
・中手指節間関節または近位指節間関節(母指の場合は指節間関節)の可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されている場合
・母指については、橈側外転または掌側外転のいずれかが健側の1/2以下に制限されている場合も、「著しい運動障害を残すもの」として取り扱います。
・手指の末節の指腹部および側部の深部感覚および表在感覚が完全に脱失した場合

なお、1手と定められていますので、障害を負った手が、右手、左手どちらでも、認定等級は、同じです

片足が5センチメートル以上短く縮んでしまったもの

交通事故による傷害のために、歩行に支障が出るほど左右の足の長さが変わってしまった場合、その長さが5cm以上短縮してしまった場合に認定されます。

※「下肢の短縮」については、上前腸骨棘と下腿内果下端間の長さを、健側の下肢と比較し、短縮した長さを算出するものとします。

片腕の3大関節中の1関節が動かせなくなってしまったもの
片足の3大関節中の1関節が動かせなくなってしまったもの

3大関節とは、腕の場合は、肩関節・肘関節・手関節をいい、足の場合は、股関節・膝関節・足関節をいいます。骨折などにより、1つの関節機能のみ用を廃した場合に認定されます。

・「関節の用を廃したもの」とは、次のいずれかに該当するものをいいます。
(a) 関節が強直したもの
(b) 関節の完全弛緩性麻痺又はこれに近い状態にあるもの
※ 完全弛緩性麻痺とは、思うように腕を曲げたり伸ばしたりできない状態
(c) 人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの

交通事故で、片手片足の3大関節のうち1つの部位が全く動かなくなった場合、神経障害で自分の意思では動かなくなった場合です。

片腕に偽関節が残ってしまったもの
片足に偽関節が残ってしまったもの

腕か足の違いだけで後遺障害の内容は同じものです。

偽関節とは、一般に、長管骨(上肢においては上腕骨、橈骨及び尺骨をいい、下肢においては大腿骨、脛骨及び腓骨をいいます。)骨折後のゆ合が不完全である(つながらない)ため、本来関節ではない部分が一見関節であるかのように異常可動するものをいいます。

偽関節が原因で仕事や日常作業において、保護具をつければ動作に支障がない場合に認定されます。
しかし、医学の進歩により、再手術などに適切な治療にて根治できるケースが殆どですので、後遺障害として適用されることは少なくなりました。

片足の指を全部失ってしまったもの

片方の足指の5指全部を失った場合で、「足指を失ったもの」とは、中足指節関節から失ったものをいいます。足の指は、身体の重心のバランスの調整、歩行時の蹴り出す力を生み出す機能があり、重要な部位です。

足指の欠損傷害について、画像により判別がつきやすいため該当していれば認定自体は難しくありません。

なお、障害が残った足が右、左足かという区別はありません。

後遺障害等級10級の損害賠償額の計算例

40歳の会社員

事故前の年収600万円

後遺障害等級8級に該当したとして仮定した場合の後遺障害に関する損害額(弁護士会基準での計算)

後遺障害等級慰謝料・・・830万円

逸失利益・・3953万6100円
600万円(基礎収入)×0.45(労働能力喪失率)×14.6430(労働能力喪失期間27年間のライプニッツ係数)=3953万6100円

まとめ

後遺障害等級8級は労働能力喪失率45%とかなり高く、一生仕事ができない、歩けないといった状況も考えられます。この場合に後遺障害慰謝料を損害賠償が支払われないとなると生活に多大な影響を及ぼすことも考えられます。
比較的判断しやすい後遺障害が多いのが特徴ですが、もし、自分の後遺障害等級に不服があるならば、異議申し立てをする必要があります。